資料4

開発課題名「ラベル不要の高機能性バイオセンサシステムの開発」

一般領域 機器開発タイプ

開発実施期間 平成21年10月〜平成25年3月

チームリーダー :  Penmetcha K.R. Kumar【(独)産業技術総合研究所 主任研究員】
サブリーダー :  南雲 收【(株)デザインテック 企画室長】
中核機関 :  (独)産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門
参画機関 :  (株)デザインテック、京都大学
T.開発の概要
 DVD基板表面にRNAあるいは機能性分子を吸着させた光ディスク(Bio-DVD)の開発と、結合する分子を光学的に高速・高感度で解析する評価システムの開発を行う。本開発では、Bio-DVD基板表面上で化学結合反応させた測定試料にレーザー光を照射し、Bio-DVDの多層薄膜構造からの干渉光変化をDVD記録再生用ヘッドで検知する。すなわち、化学結合の有無を反射率変化として高感度で感知するため、蛍光化合物などによるラベル化が不要な画期的な高機能バイオセンサを実現し、医療、食品、環境分野での応用が期待される。
U.開発項目
(1)Bio-DVD用アプタマーの作出、安定化とディスク上への吸着
 10数種類のアプタマーおよび抗体と、それらの標的分子との結合をDVD基板上で測定し、感度の点でBiacore T100を用いた表面プラズモン共鳴法と比べ遜色ない測定結果を得た。しかし、アプタマー等をDVD基板上へ固定化した後に行う結合反応、洗浄、乾燥などの際に、非特異的吸着によるバックグランドが問題となった。最初はディスク基板を用いないpre-step法を導入することにより、非特異的吸着による問題を解決した。
(2)Bio-DVDメディア開発
 既知のマトリックス法を用いて、DVDの多層薄膜構造からの反射率のシミュレーションを基に多層薄膜、特に反射層間にある誘電体層等の厚みを変化させ、新たに薄膜構造の設計を行い、反射率感度で目標とおりの性能を有するメディアを開発した。
(3)Bio-DVD信号解析部、全体システムの検討
 Bio-DVD上に固定化した分子が存在する箇所にアドレス情報を記録し、アドレス情報を元に分子を固定化したスポット領域をカバーするDVD上の複数トラックから信号を検出し積算する信号処理技術を開発し、ノイズ信号を大幅に低減することに成功した。最終的に、読み出し信号レベルを高速に精度よく検出するプロトタイプ機を完成することに成功した。
(4)Bio-DVDスポッティング手法の検討、決定
 ハイスループットスポッティング技術に関しては2つの手法を検討した。一つはインクジェットプリンター用ヘッドを用いた単一溶液の高速スポッティング法で、ナノリットルのドロップを高速で回転しているBio-DVDディスク上にインクジェット滴下し、滴下後にシステムのレーザーヘッドを用いて滴下周波数に同期した反射率変化を確認できた。二つ目の手法は多品種溶液の高速固定化であり、規格化したサイズのマイクロキャピラリーに多品種溶液を注入後、一端を封じ、ロール上に整列させ、Bio-DVDとロールキャピラリーの一体を減圧容器に入れた品種溶液のドロップレットを同時にディスク表面に固定化する手法で、実際に実験を行い、この手法が多品種溶液固定に有効であることを確認した。上記の結果から、まだ基礎段階ではあるが十分ロボット化が見込める状況まで研究開発を発展させた。
V.評 価
 本開発は、微小光学の最先端技術が安価に手に入るDVDを基に、ハイスループット生体高分子相互作用解析システムを開発しようとするものである。個別の要素技術の成果には興味深いものが含まれており、今後の発展が期待できる。しかし、開発チームの十分な努力が認められるものの、DVD基板の非特異的吸着等の反応阻害要因がネックとなって、要素技術を統合した、ハイスループットなバイオセンサシステムの開発という最終目標まで到達できなかったことが惜しまれる。本開発は、当初の開発目標を達成できなかったと評価する。チャレンジングな課題ではあるが、課題解決のための方向性は見えており、各要素技術を統合し、システム化・実用化開発を継続することを期待したい[C]。


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