資料4

開発課題名「分子識別3次元立体/断層画像計測用誘導ラマン散乱光干渉計の開発」

(平成23年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  由井 宏治【東京理科大学 理学部 准教授】
中核機関 :  東京理科大学
参画機関 : 
T.開発の概要
 誘導ラマン散乱光のもつ位相コヒーレンスに着目し、医療・工業・情報分野における3次元立体像や断層像に用いられるホログラフィやトモグラフィに応用可能なヘテロダイン誘導ラマン散乱光干渉計を開発する。最大の特徴は、分子の指紋領域におけるラマン散乱光の強度だけでなく、光干渉により位相も記録することで、分子識別ホログラフィ・トモグラフィ計測技術が実現できることにある。
U.中間評価における評価項目
(1)誘導ラマン散乱光干渉計の光学系の構築
 チタンサファイアレーザーで励起した2つの波長変換装置(Optical Parametric Oscillator、OPO)からの近赤外領域の出力を光源とした誘導ラマン散乱干渉計の光学系を設計し、構築することに成功した。Nd:YVO4レーザーの第二高調波(波長532 nm、出力14.5 W)を用いてモード同期チタンサファイアレーザー(波長800 nm、パルス幅2 ps、出力3.8 W、パルス繰り返し76.1 MHz)を励起し、得られた出力を2つに分割後、それぞれOPOに導入することで、波長範囲1,100〜1,600 nmで独立に可変な近赤外領域の出力を得た。
(2)光干渉に基づくインターフェログラム信号の検出
 試験試料としてポリスチレンフィルムを用い、そのベンゼン環呼吸振動(波数1,003 cm-1)を対象として選択した。ポンプ光を1,100 nmに固定し、ストークス光の波長を変化させつつ、ポンプ光とストークス光との遅延時間を掃引した結果、ストークス光の波長が1,236 nm近辺のときに、遅延時間0 ps付近に下向きの誘導ラマン散乱による信号を得ることに成功した。また、現時点では微弱ではあるが、誘導ラマン散乱信号と局所発振光(Local Oscillator、L.O.)との干渉パターンが観測された。このような、ラマン効果によって生じた信号光とL.O.の干渉パターンの観測例は未だ存在せず、本結果が世界初のものである。
V.評 価
 独自のヘテロダイン誘導ラマン散乱光干渉計を開発することにより、3次元立体像や断層像に加え分子識別が可能なホログラフィ・トモグラフィ計測技術の確立を目指している。予備実験をもとに設計を工夫した光学系の開発は順調に進捗しており、中間評価での各目標は全て達成し特許出願もなされている。世界初の原理検証をもとに、将来の医療診断への展開を見据えた波長1,000 nm以上で発生する誘導ラマン散乱信号の観測に成功したことは高く評価できる。今後は、更なるS/N比の向上や測定時間の短縮に向けた一段の工夫を重ねて、応用分野への具体的な適合化をはかる努力を継続し、成果に結び付けることを期待する。今後も開発を着実に推進すべきである[A]。


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