資料4

開発課題名「次世代型蛍光プローブの創製を目指した新規蛍光団の開発」

(平成23年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  花岡 健二郎【東京大学大学院 薬学系研究科 准教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 : 
T.開発の概要
 生命科学研究において、生体応用における多くの利点から緑色蛍光団である「フルオレセイン」は蛍光プローブや蛍光標識剤の基礎骨格として広く用いられ、古くから盛んに研究されてきた。本開発では、これまでのフルオレセインに関する全てのノウハウを適用可能であり、さらに100 nmも長い吸収・蛍光波長を持つ新たな赤色蛍光団の開発を目指す。これによって、低い自家蛍光や高い組織透過性、マルチカラーイメージングへの応用など革新的な展開が可能となり、フルオレセインに取って代わる新たな蛍光団となることが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)新規蛍光団TokyoMagenta類の合成法の確立(合成ルートの確立)
 新規蛍光団 「TokyoMagenta(TM)類」の効率的な合成ルートを確立した。また、蛍光団のキサンテン環4,5位へCl基またはF基を導入した2-Me DCTMや2-Me DFTMの効率的な合成ルートの確立にも成功した。
(2)新規蛍光団TokyoMagenta類における蛍光制御原理の確立(蛍光制御原理の確立)
 新規蛍光団に適応可能な新たな蛍光制御原理として、光誘起電子移動、吸収波長シフト、分子内ラクトン環形成、の3つの蛍光制御原理の確立に成功した。
(3)新規蛍光団TokyoMagenta類を基礎骨格とした赤色蛍光プローブの開発(蛍光プローブの開発)
「カルシウムイオン蛍光プローブ」については、既に培養細胞からラット脳切片への生物学研究への応用にも成功した。「β−ガラクトシダーゼ活性を検出するプローブ(プロトタイプ)」は、キュベットおよび培養細胞レベルでその有用性を確認した。「過酸化水素を検出するプローブ(プロトタイプ)」は、キュベットレベルでその有用性を確認した。
V.評 価
 蛍光ラベルとして最も広く使われているフルオレセインの特性を上回る蛍光団(TokyoMagenta類と命名された、キサンテン環骨格にSi(ケイ素)原子を含むもので、励起波長が600nm領域という特徴あり)の開発を通じて、バイオイメージング分野における有機小分子の革新的展開を目指すという提案である。TokyoMagenta類の蛍光制御原理の確立や、新規蛍光プローブへの応用(Caイオン、β−ガラクトシダーゼ、過酸化水素といった3つのプローブ)を開発し、その有用性を示すとともに、特許出願も行った。中間点で当初の目標を上回る成果を挙げている。「β−ガラクトシダーゼ活性検出蛍光プローブ」では、細胞内滞留性を上げることで、より高感度化に成功するなど、目標外の成果も得られた。今後は、理論的解明をさらに進めることが期待される。実用化については、販売を希望する企業にライセンス化することで、蛍光試薬の製品化を目指すとのことであるが、そのためには、既存の試薬と比べてかなりの優位性を必要とするが、可能性は十分あり、開発を積極的に推進すべきである。[S]


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