資料4

開発課題名「サブセルラー分析対応高解像度質量分析イメージング試料調製技術の開発」

(平成23年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  澤田 誠【名古屋大学 環境医学研究所 所長】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 : 
T.開発の概要
 現状では解像度が300μm程度である質量分析(MS)イメージングを、既存のケミカルプリンターとすでに開発した「特定細胞分析技術+座標再現機能」搭載レーザーマイクロディセクション(LMD)顕微鏡とを大きな改造を施さずに融合させることによって、普及型MALDI -TOF質量分析装置に対応する汎用MSイメージングの40倍高解像度化ユニットを開発し、病理診断や細胞診断、再生医療における単一細胞分析などの高精度MSイメージングに資する技術を開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)座標再現ステージによるケミカルプリンターの改造
 ケミカルプリンターの大幅改造の当初計画を廃棄し、LMD装置の改造に絞って開発を進めた結果、想定以上の性能を実現できている。ディセクションフィルム上の利用可能領域を当初より厳しく設定し、座標再現ステージのX-Yおよびアーム動作のX-Y-Zのステッピングモータをより精度の高いものに交換し、ドライバーソフトウエアの改造も行った結果、開発当初の回収スポット数5 x 5においても中間目標の10 x 10においても最終点のずれは200μmを越えることがなかった。また、LMDサンプルアームの改造およびドライバーソフトウエアの改良を行った結果、アームの上下動時に生じる不随意な回転を完全に解消することができた。結果、100スポットの回収が容易となった。
(2)特定単一細胞の同定とMS分析機能の開発
 2種類の性質の異なる培養細胞を混合し培養後、LMDにて赤色蛍光細胞を100個切り出した結果(10回施行)、すべての検体においてマーカーmRNAが検出でき、コンタミ細胞のマーカーは1施行のみの検出であった。Ds-N18細胞の培養から単一細胞を個別に切り出し、ハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現をRT-PCRで検討した結果マーカーmRNAが検出できる切片は 95%であり、目標以上を達成した。
(3)MSイメージングの条件の最適化と差別化
 α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸をマトリックスとすると、5種ペプチドをスポット・固定したマウス脳切片からそれらペプチドの検出できた。また、オリゴDNAを検出できるマトリックス成分として、3-ヒドロキシピコリン酸アンモニウムクエン酸塩(50%アセトニトリル)を見出した。
V.評 価
 独自の「特定細胞分析技術+座標再現機能」搭載レーザーマイクロディセクション顕微鏡と市販のマトリックス塗布用ケミカルプリンターとを組み合わせることにより、普及型MALDI−TOF−MS装置を用いて、サブセルラー分解能の質量顕微鏡が実現できるような試料前処理装置の開発を目指している。開発は順調に進捗しており、中間評価時点での各目標は全て達成されている。当初目標に掲げた成果は十分達成できると期待される。今後とも各種の応用検証に努めるとともに、特許化を意識しながら、本開発の優位性を確保するための努力を継続し、開発を着実に推進すべきである[A]。


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