資料4

開発課題名「3次元超解像顕微鏡用照明光学系の開発」

(平成23年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  池滝 慶記【オリンパス(株) 未来創造研究所 リサーチコー ディネータ】
中核機関 :  オリンパス(株)
参画機関 : 
T.開発の概要
 生命科学の研究現場では、細胞内の生命現象を司るサイズ100 nm以下のオルガネラの機能を分析できるツールが強く求められている。本課題では、蛍光抑制効果を用いた超解像顕微法において、横および深さ方向の分解能を同時に向上できる照明光学系を開発する。本光学系を市販のレーザー走査型顕微鏡に搭載し、オルガネラを空間的に2点分解できるゼプトリットルの立体分解能をもつ3次元超解像顕微鏡システムを実現することを目標とする。
U.中間評価における評価項目
(1)ハイブリッド接合の基板の作製(光学平坦度)
 実際に使用する対物レンズの瞳径20mmφに関しては、ほぼ目標値に近い、λ/18RMSを達成した。基本的には、光学面精度に関してはほぼ位相板を作製するには十分な値である。しかし、この基板の絶対厚みで決定される偏光状態に関しては現状開発途中である。
(2)2色対応多層膜の試験加工(2波長対応8分割スパイラル位相板による超解像機能の確認)
 初期計画では8分割の位相板を予定していたが、予備試験を行ったところ蒸着マスクの置換えが頻繁におこり領域界面での蒸着エラーが発生し、十分な精度で位相制御ができないことが判明した。しかし、設計検討の結果、領域分割数の少ない単純な4分割の2波長対応スパイラル位相板でも遜色ない超解像機能が得られることを見出し、この位相板を作製したとろ目標を上回る横分解能を得られた。
(3)1次試作によるハイブリッド位相板による1次元超解像機能の評価(蛍光ビーズによる3次元点像分布関数の評価)
従来型の輪帯位相板では、横分解能:120nm 縦分解能:160nmは得られている。しかし、ハイブリッド位相板用の製膜条件の割出しと試験製膜は完了しているものの、偏光状態が完全に制御されたハイブリッド接合の基板が完成していないため、ハイブリッド位相板による3次元超解像機能の評価は今後の課題である。
V.評 価
 焦点面内、深さともに分解能が50nmという光の回折限界を超える3D超高解像度をもつ新規の顕微鏡光学系を目的とした開発である。ポンプ光(照明光)にイレース光を加えることで、3D的に微小領域を照明できる光学系により、三次元的に走査するが、そのために必要となる位相板の作成が鍵となる。一部計画に遅れが見られる項目もあるが、解決策も用意され、論文・特許出願もコンスタントに行われていると評価できる。今後具体的に細胞を対象とする性能検証を進めつつ、当初の目標を達成することを期待する。(細胞)生物科学の今後の発展にとって、テーマの重要性は高く、開発を着実に推進すべきである。なお、現場現象だけに立脚するのではなく、光学原理の裏付けを持って進めるべきである。また、生命科学系の研究者と相互に連携し、実試料での検証を早期に行うべきである[A]。


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