資料4

開発課題名「ベクトル磁場検出・高分解能・近接場磁気力顕微鏡の開発」

(平成23年度採択:機器開発タイプ【領域非特定型】)

チームリーダー :  齊藤 準【秋田大学 工学資源学研究科 教授】
サブリーダー : 蓮村 聡【(株)日立ハイテクサイエンス 分析技術部 技術2Gプローブ顕微鏡担当】
中核機関 :  秋田大学
参画機関 :  (株)日立ハイテクサイエンス、秋田県産業技術センター、日東光器(株)
T.開発の概要
 本プログラム「要素技術タイプ」で得られた成果をもとに、探針試料間の交流磁気力により誘起される探針振動の周波数変調現象を利用して、従来困難であった試料表面近傍での磁場計測を実現し、世界最高の空間分解能5nm以下を得ることを目指す。また、これまで難しかった磁場のベクトル計測を、周波数復調時の位相情報処理により実現し、同時に試料磁極の極性の直接検出を行う。本顕微鏡により、電気自動車用永久磁石材料、高密度磁気情報デバイス・材料などの研究開発が加速されることが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)ハード磁性探針(交流磁場計測用)
 円錐型Si探針に高保磁力FePt-MgO合金を成膜したハード磁性探針を作製して高密度垂直磁気記録用の書き込みヘッドを観察し、空間分解能8 nmを有する交流磁場像を得た。計測可能磁場は最大15 kOeであることを確認した。
(2)ソフト磁性探針(直流磁場計測用)
 ピラミッド型Si探針にFeCo合金を成膜したソフト磁性探針を作製して高密度垂直磁気記録媒体を観察し、空間分解能6 nmを有する直流磁場像を得た。計測可能磁場は最大5 kOeであることを確認した。
(3)交流磁場印加機構
 計算機シミュレーションに基づいて交流磁場印加機構を設計試作し、電磁石のセンターコアからの高さ約2 mm(試料厚み1 mm + 空隙1 mm)において、3.3 kOeの最大磁場を得た。
(4)計測システム
 「要素技術タイプ」で製作した小型顕微鏡システム等を用いた磁場観測結果を基に、計測システムの仕様を決定した。振動抑制のために交流磁場印加機構を顕微鏡システム本体と分離して設置することとし、顕微鏡システムの設計を完了し試作・調整中である。
V.評 価
 磁性探針の固有振動に外部から交流磁場を印加し周波数変調を発生させることで、試料の近接磁気力を大気中で高感度に計測可能なシステムを開発することを目的としている。本プログラム「要素技術タイプ」で培った技術をベースに、それぞれ専門技術を有する参画機関の連携の下、目標に向けて着実に成果を挙げている。さらに、磁場の勾配だけでなく絶対値も計測できる可能性を見出したことも高く評価できるが、これについては精度や再現性を含め定量的な評価が必要である。多分野のユーザーから期待される技術開発であるが、今後とも、当初目標をベースとし狙いを絞って開発を着実に推進すべきである[A]。


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