資料4

開発課題名「燃料電池内3次元反応分布可視化装置の開発」

(平成23年度採択:機器開発タイプ【アクションプラン対応領域】異相界面における
パワーフロー現象解明のための計測技術)

チームリーダー :  犬飼 潤治【山梨大学 燃料電池ナノ材料研究センター 特任教授】
サブリーダー : 南雲 雄三【(株)島津製作所 主任研究員】
中核機関 :  山梨大学
参画機関 :  (株)島津製作所、早稲田大学、慶應義塾大学、みずほ情報総研(株)、パナソニック(株)
T.開発の概要
 発電中の燃料電池内部の任意箇所に、必要個数のマイクロサイズの検出プローブを挿入し、ガス流路からアノード、電解質、カソードにかけての平面および深さ方向の物質の同定と状態、反応過程、物理現象を高時間(ミリ秒)・空間(マイクロメートル)分解能で測定することにより、任意運転状況下の電池内の現象を3次元的に明らかにし、可視化および定量が可能な、これまでにない画期的な3次元計測可視化システムを開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)マイクロプローブ1本を燃料電池内に設置し情報を得る技術(プローブ作製、挿入技術、燃料電池、測定技術)
 @いずれのプローブも、期待通りの形状であり、10μm程度以下の分解能を有すると見積もられている。したがって、基本的な加工技術を得ることに成功した。A酸素感応色素をmg単位で合成し、オプティカルプローブの先端に塗布することが出来た。色素膜厚は、マイクロメートルで制御可能である。BMEA(正式名称)に100μmの穴を開ける技術と、その穴の中にオプティカルプローブを挿入する技術を確立し、横方向、縦方向とも10μmの分解能を持つ。また、プローブ1本を挿入する技術を、目標どおり確立した。Cプローブ1本を挿入可能で、2次元可視化を行うことが出来るセルの設計・構築のノウハウは確立した。今後は、複数本のプローブを挿入可能で、実際の燃料電池により近いタイプのセルを作製することが課題となる。D色素を用いた酸素分圧測定は達成された。二酸化炭素等の色素を用いた測定も可能である。E色素を用いた酸素分圧測定では、ミリ秒の時間分解能が達成できる見通しを得た。また、CARS測定においてもミリ秒の時間分解が得られている。
(2)2次元データを利用した3次元可視化技術(2次元可視化データ利用)
 シミュレーションソフトウェアの開発は予定通り進んでいる。今後、プローブ及び2次元可視化データを取り入れて3次元可視化を行うだけの性能を持っていることが分かった。開発後期に得られる実験結果を取り入れて、3次元シミュレーションを進めていく。
V.評 価
 動作中の燃料電池にCARSプローブを複数挿入して水分子の3次元反応分布を求めることを目的とした開発である。現時点では1本の光学プローブでのテスト段階であるが、測定に必要な要素機器として光計測、導電性計測のプローブの開発、酸素感能色素の開発は順調に進んでおり、応答速度ミリ秒の達成に見通しを得ている。また、可視化セルでの水分量と発電密度の二次元分布解析が進み、プローブデータとの相関を取るシミュレーション環境が整ってきている。 真に役立つ汎用的な計測技術にするための今後の課題として3次元分布計測の技法開発が重要である。同時に、本開発の主目的である全体機能に対する個々のプローブデータの位置づけを明確にするため、部分的な素過程と全体機能の動的相関性を明確化する機能モデル化に注力し、開発を着実に推進すべきである[A]。


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