資料4

開発課題名「文化財等複合材料評価用ラマンイメージング装置の開発」

(平成21年度採択:プロトタイプ実証・実用化タイプ)

開発実施期間 平成21年4月〜平成24年3月

    
チームリーダー :  東山 尚光【(株)エス・ティ・ジャパン 商品開発部 部長】
サブリーダー :  坂本 章【埼玉大学 大学院理工学研究科 物質科学部門 准教授】
中核機関 :  (株)エス・ティ・ジャパン
参画機関 :  埼玉大学、人間文化研究機構 国立歴史民族博物館
T.開発の概要
文化財測定に適合する、分光器部に「液晶チューナブルフィルター(LCTF)」を用いた可搬型のラマンイメージング装置をすでに開発している。LCTF は特定波長(波数)でのイメージングには最適なものの、広い波数範囲のスペクトル取得には波長(波数)掃引が必要となり、比較的長い測定時間を要している。本開発では、装置の実用化と応用範囲の拡大を目指し、革新的な「次元圧縮型イメージファイバー」と、これに適合する「分散型小型分光器」を開発し、波長掃引やイメージ走査することなく、フルスペクトルとイメージデータを、数秒から数分で同時取得できる装置の実現を目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)次元圧縮型イメージファイバーを用いた可搬型ラマンイメージング実用装置の開発
 イメージ測定エリア、イメージ画素数、空間分解能、スペクトル分解能、スペクトル測定領域、測定時間について、一部目標を変更したが、設定した目標を達成し、性能面の製品化の目処を付けた。コスト低減では、装置各部のモジュール化等により従来の装置の2/3から1/2程度で作製できる見通しを得た。また、ケモメトリックス、イメージングソフトウェアへのインターフェースソフトウェアを完成させ、新規に作製したアプリケーションソフトウェアに機能を組み込んだ。
(2)文化財のラマンスペクトルデータベースの構築
 着色剤、和紙、布、膠着剤などの文化財構成材料のスペクトルデータベースを作成した。収録データは、約450である。さらに、文献などから過去に報告されている文化財材料の組成、構造、色、修復記録などを知識データベース化し、「歴史民俗博物館」および「人間文化研究機構研究資源共有化システム」のWEBサイトから閲覧できるようにした。今後、これらの知識データベース内に、文化財構成材料のスペクトルデータベースをリンクできるように計画している。
(3)その他
 当初「785nm励起の装置」と「532nm励起の装置」各々1台を開発する予定であったが、途中で計画を変更し532nm励起の装置については設計までにとどめ、需要が多いと思われる785nm励起の装置で商品化することとし、完成させた。
V.評 価
二次元ファイバーを一次元に再配列して検出する現場型で高速高性能のラマンイメージング装置の実用化開発を目的としている。実用ニーズの高い785nm励起モデルを優先して開発し、商品レベルの完成度まで達成していることは評価できる。また、文化財構成材料(絵画の顔料など)のデータベース構築は充実度に遅れはあるもののデータ整備体制は整っており、順次拡充するものとみられる。また今後、文化財以外への本装置の応用展開も期待できる。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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