チームリーダー : |
山下 豊【浜松ホトニクス(株) 中央研究所 研究主幹】 |
サブリーダー : |
阪原 晴海【浜松医科大学 医学部放射線医学講座 教授】 |
中核機関 : |
浜松ホトニクス(株) |
参画機関 : |
浜松医科大学 |
- T.開発の概要
- 乳がんの新しい検査技術として、近赤外光を用いた画像診断法(光マンモグラフィ)が注目を集めている。これまでの臨床評価研究で有用性が明らかになった光マンモグラフィ装置について、高感度化・高精度化、画像再構成の高速化によるスループットの改善、プローブ光の多波長化による検出能の向上を図り、乳がんスクリーニングに適用できる実用機の開発を目指す。
- U.事後評価における評価項目
- (1)達成目標
- @10mm以下の乳腺病変を検出できること、A計測時間は片側10分以内、両側20分以内、B 3次元画像再構成時間は3波長のデータに対して45分以内、C乳房組織のへモグロビン濃度に関する情報を取得できることを目指した。
- 1)半導体パルスレーザー光源
- 試作した半導体パルスレーザー光源(760nm,800nm,830nm)は、何れの波長も半値幅3ns以下、出力10mW以上を確認した。また、各光源ユニットはトリガー制御による時系列点灯を可能にした。環境温度変化に対する光出力の安定度は0.1%/℃と極めて良好であった。この半導体パルスレーザー光源の開発により、従来1波長ずつ切り替えていた計測を1回で済ませることが可能となり、計測時間の短縮を実現し、片側7分、両側15分以内と計測時間の目標を達成した。
- 2)時間分解計測部
- 単一光子時間相関計数法に対応した時間分解計測部を試作し、設定した全ての目標仕様を達成した。
- 3)ガントリー部
- ガントリー部は腰部より足側はスロープを設け、腹臥位の被験者への負担軽減を図った。計測カップは従来の固定サイズ半球カップ(直径128mm)を軸垂直に4つのリングに分割し、深さ方向にスライドさせることによりSサイズ(425cc)、Mサイズ(557cc)、Lサイズ(775cc)と容量可変のガントリーを開発した。また、この計測カップにはインターフェイス剤が循環されているが、自動化要素として連続吸引排出機構を構築した。なお、計測カップの開発では、モーター駆動に依る自動容量変更機構と、乳房の形状計測のための超音波プローブ設置の追加工とを行った。
- 4)画像再構成
- 画像再構成の演算処理を、マルチコアCPUを用いた並列処理だけでなくGPU(Graphic Processing Unit)を用いた並列処理も組み合わせた結果、ボクセルサイズを4 x 4 x 4mmと目標仕様よりも小さくしても、両乳房の3波長データに対する画像再構成時間を10分以内とすることができた。また、3波長のデータを用いてヘモグロビン情報を取得することが出来た。
- V.評 価
- 色素を注入することなく、しかも10mm以下の乳がんを検出することができる無侵襲光マンモグラフィの開発である。開発は順調に進捗し、目標値は全て達成した。本開発成果は感度が高いだけでなく、被験者に圧迫などの苦痛を与えることなく検出できるというメリットを有しており、早期の実用化が強く期待される。今後、臨床評価データを蓄積し、早急な製品化・普及を望みたい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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