資料4

開発課題名「全自動2次元電気泳動・ウェスタンブロッティング装置の開発」

(平成21年度採択:プロトタイプ実証・実用化タイプ)

開発実施期間 平成21年4月〜平成24年3月

    
チームリーダー :  鵜沼 豊【シャープ(株) 研究開発本部健康システム研究所 室長】
サブリーダー :  荒木 令江【熊本大学 大学院医学薬学研究部(医学部) 准教授】
中核機関 :  シャープ(株)
参画機関 :  熊本大学
T.開発の概要
バイオ基礎研究から創薬開発・早期診断・個別化医療に繋がるプロテオーム解析研究の飛躍的な進歩に貢献するための、高速・高感度・高分解能をもつタンパク質解析ツールを開発する。従来不可能であった2次元電気泳動と電気的膜転写工程を完全自動化したプロトタイプ機を既に開発しており、本開発では自動免疫反応工程の付加、動作安定化、分解能・再現性・簡易性の向上等のレベルアップを図った実用機を開発する。
U.事後評価における評価項目
(1)全自動電気泳動装置部の開発
 分解能を等電点電気泳動で0.02pH以上、分子量分解能を低分子領域で2kDa以上を目標に開発を行った。分解能では、1次元目分離の等電点電気泳動用ゲルの製造プロセスの改善及び全自動電気泳動装置における高電圧(6000V)印加制御装置の改善を行い目標の等電点電気泳動分解能0.02pH以上を達成した。これによりタンパク質のリン酸化シフト(0.05〜0.1pH)を分離することが可能となった。一方、分子量分解能では、2次元目分離用ゲルの性能改善により分子量分解能2kD以上を達成した。
(2)ブロッティング装置部の開発
 転写効率90%以上を目標に開発を行った。新規転写方式(排出転写方式)の開発により、転写効率の目標を達成した。これにより転写ばらつきも低減され定量的な評価が可能となった。
(3)その他
目標には掲げなかったが、全自動電気泳動装置に関しては操作性と再現性の改善(強度ばらつき11%以内、位置ばらつき4%以内)、更に量差性の改善により商品化を達成した。また、脳腫瘍に関わるvimentineタンパク質のリン酸化パターンを、開発した全自動2次元電気泳動装置及びブロッティング装置にて検出し、抗がん剤感受性をリン酸化等のパターンで判別可能であることを示した。さらに、電気泳動後の画像解析ソフトを開発し、サンプルの異なる電気泳動画像間のスポットマッチングにて100%近いマッチング率を達成した。
V.評 価
疾病を早期に捉えるためには、特定の疾病マーカータンパク質だけに注目するのではなく、多面的に捉え、疾病が発症する前の、生体システムの変調を知る必要がある。その認識のもと、短時間で再現性良く、2次元電気泳動とウェスタンブロッティングを行うことができる自動解析装置の実用化開発である。当初の目標値(pH分解能0.02、分子量分解能2kDa以上)を達成しただけでなく、それ以上の性能をもつ自動装置として組みあがっている。特に、全自動2次元電気泳動装置は既に上市を達成しており、周辺特許も多数出願していることも高く評価したい。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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