資料4

開発課題名「全自動糖鎖プロファイル診断システムの開発」

(平成21年度採択:プロトタイプ実証・実用化タイプ)

開発実施期間 平成21年4月〜平成24年3月

    
チームリーダー :  濱田 和幸【システム・インスツルメンツ(株) 取締役社長】
サブリーダー :  西村 紳一郎【北海道大学 大学院先端生命科学研究院 教授】
中核機関 :  システム・インスツルメンツ(株)
参画機関 :  北海道大学、ブルカー・ダルトニクス(株)、サイエンス・テクノロジー・システムズ(株)
T.開発の概要
本事業「機器開発タイプ」で開発したプロトタイプ機をもとに、血清等の生体試料から糖鎖を精製・分析し、糖鎖の定量的発現プロファイルに基づいて疾患診断情報を与えるまでの一連の工程を全自動化した装置の開発を行う。自動前処理装置部により血清中複合糖質糖鎖を選択的に回収した後、自動測定装置によって糖鎖構造プロファイルを取得し、データ解析システムによる糖鎖情報のバーコード化を行う一連の解析システムを構築する。疾患早期診断、個別化医療の実践に即した本システムの普及が期待される。
U.事後評価における評価項目
(1)糖鎖の全解析が可能な自動糖鎖解装置の開発
 検体の処理能力、測定能力、解析能力がそれぞれ96検体/日以上 の仕様を有し、全工程(糖鎖回収・糖鎖プロファイル取得・糖鎖情報抽出)を通して2日以内に終了する装置を目標に開発を行った。開発装置の検体処理能力を評価した結果、96検体の処理速度は14時間以内であり、目標を大きく上回る能力を達成できた。また、検体測定能力では、プロセスの検討・改良を行った結果、96検体の測定を2時間で完了することが可能となった。さらに、検体解析能力では、ピークピックソフトウェアを新たに設計・開発することにより、96検体の解析を4時間程度で実施することが可能となった。すなわち、48時間としていた本プログラムの目標値を達成した。
(2)総合的な糖鎖プロファイル解析診断システムの確立
 取得したデータの処理から管理までを一括するソフトウェア環境を開発することで、疾患判断処理能力が96検体・1疾患/時以内、定量解析される血清糖鎖分子種が35種類/サンプル以上、検体として必要な血清の量が10 μl/サンプル以下を目標に行った。疾患判断処理能力では、実証試験として実施した肝がん患者と健常者の糖鎖プロファイルの取得と、その比較解析の結果、肝がんマーカーとなりうる糖鎖を見出し、このような特定のマーカー糖鎖が決定されている場合は、糖鎖プロファイルからその定量データセットを抜粋し、疾患の閾値判定を1時間以内に行うことが可能となった。また、血清糖鎖分子種と、血清量については、10 μlの血清サンプルより定量解析される糖鎖も60種類以上と目標を大きく上回る能力を達成できた。糖鎖ピークの取得は10 μl以下でも可能であるが、定量性と診断性を両立するため、必要血清量は10 μlとした。
(3)その他
目標に掲げていなかった成果として、糖鎖自動前処理装置の恒温処理機能を有する小型恒温槽の開発に成功し、受託製造が可能となった。また、糖鎖補足用ビーズBlotGlycoを用いた糖鎖精製、標識、切り出しまでを自動化可能な小型の開発に成功し、受託製造が可能となった。
V.評 価
本事業「機器開発タイプ」(疾患早期診断のための糖鎖自動分析装置開発)を基礎技術にして、病理診断装置としての糖鎖プロファイルを、全自動で短時間に高精度で検出できる装置の製品化を目指した実用化開発である。測定性能向上が目標以上に達成され、プロトコルや内部コントロールとして使用する標準試料などが十分固められている。別途、実用的な判定支援プログラムも用意されて、研究用機器としては十分な性能・ユーザビリティをもつ機器として完成したと言える。また、医療機関等と提携して、実証サンプルデータの蓄積が開始されており、今後は臨床現場での活用が期待される。臨床用機器としての実用化には、データベースの構築、様々なケースでのデータ取得・拡充が必要であり、この取組をさらに加速することが望ましい。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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