資料4

開発課題名「AFM 探針評価標準試料の開発」

(平成21年度採択:プロトタイプ実証・実用化タイプ)

開発実施期間 平成21年4月〜平成24年3月

    
チームリーダー :  竹中 久貴【エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ(株) 先端プロダクツ事業本部ナノテクビジネスユニット 主幹担当部長】
サブリーダー :  井藤 浩志【産業技術総合研究所 計測フロンティア研究部門 主任研究員】
中核機関 :  エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ(株)
参画機関 :  産業技術総合研究所、物質・材料研究機構、東京理科大学、オリンパス(株)、大研化学工業(株)
T.開発の概要
原子間力顕微鏡(AFM)による実形状測定のために、本事業「要素技術タイプ」での成果をもとに、プローブ形状測定標準試料および校正状態確認用グレーティングの実用化に向けた開発を行い、多層膜を利用した標準試料作製技術を確立する。また、市場にあるAFM カンチレバーに対応した標準試料を開発することで、カンチレバーに形状測定機能の付加価値をつけ、ISO に準拠したソフトウェアを開発し、ユーザーに利便性を提供する。
U.事後評価における評価項目
(1)櫛形標準試料の開発
 Si系多層膜型標準試料の開発、化合物半導体系多層膜型標準試料の開発、試料の歩留まり60%に高めた低価格化の実現を行った。探針形状評価用の間隙が10nm〜80nmの構造を有し、垂直性が0.2°以内、精度評価用の周期60nmの構造を併せ持ったキャラクタライザ(ハイアスペクト比プローブ用)を作製した。また、探針形状評価用の間隙が10nm〜100nmの構造を有し、垂直性が2°以内、精度評価用の周期26nmの構造を併せ持ったキャラクタライザ(汎用シリコンカンチレバー用)を作製した。歩留まりに関しては、トータル50%の歩留まりを実現し、外注工程の内製化を合わせ、20個作製した場合の原価を8万円/個と、プロジェクト応募時の目標の半額以下を達成した。
(2)CNT型標準試料の探索と汎用プローブ用CNT型キャラクタライザの開発
 CNT(カーボンナノチューブ)を線幅80〜100nmの石英製櫛形試料に搭載する技術を確立した。直径を分光的に正確に同定する方法を開発し、それにより同定した1nmφのSW-CNTを用い、安定した探針評価が可能であることを実証した。また、直交する100nm幅のトレンチ上に直径22nmのマルチウォールCNTをX-Yの2方向に架橋させたキャラクタライザ(汎用プローブ用CNT型キャラクタライザ)を作製した。
(3)標準試料の精度の確保
トレーサブルAFMによる測定結果から、キャラクタライザの周期構造の不確かさ0.03nmを達成した。また、TEM観察の前処理において極細幅内でも犠牲膜が入り込む技術を確立し、キャラクタライザの外周部を正確に評価することが可能となった。
(4)画像再構成ソフト及びシステムの開発
 標準試料の測定から探針形状関数抽出プロトコルの開発では、標準データフォーマット及び3次元探針立体表示プログラムを作成すると共に、多様なAFMフォーマットへの対応化を図った。AFM像の再構成を行うプログラムの開発では、実探針形状関数を用いてAFM像の再構成を行うプログラム及び標準試料を用いないブラインド再構成プログラムを試作した。
V.評 価
本事業「要素技術タイプ」(AFM探針形状評価技術の開発)を基礎技術にして、AFMプローブを評価する標準試料の実用化開発である。櫛形標準試料とCNT利用のキャラクタライザの開発、標準試料の精度確保および画像構成ソフトとシステムの開発に関して、全ての開発目標を達成している。本開発期間中も多様なユーザー評価を実施し、ラウンドロビンテストを実施しているが、さらなるユーザーやSPM装置メーカとの連携を密にし、本成果を国際標準化することを強く期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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