資料4

開発課題名「トモグラフィー電子顕微鏡用ソフトウェアの開発」

(平成21年度採択:ソフトウェア開発タイプ)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  森 博太郎【大阪大学超高圧電子顕微鏡センター 特任教授】
サブリーダー :  古江 基樹【(株)国際バイオインフォマティクス研究所 代表取締役】
中核機関 :  大阪大学
参画機関 :  (株)国際バイオインフォマティクス研究所、大阪大学(情報科学)、大阪工業大学
T.開発の概要
電子顕微鏡トモグラフィーが生命科学や材料工学の研究分野で活用されているが、これを医療や工業分野で汎用化するため、トモグラフィー専用電子顕微鏡に搭載する立体ナノ構造の可視化ソフトウェアを開発し、立体組織の高速可視化を目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)電子顕微鏡トモグラフィー像の輪郭抽出と立体表示
傾斜角度を変えた一連の画像データについて特徴点抽出・追跡・外れ点除去・補正モジュールを開発し、一連の画像のズレ補正を高速で行いCT画像を得る画像アライメント自動化ソフトウェアを開発した。また、輪郭抽出アルゴリズム(Cnty)についても高速化、高精度化を実現し、補正した再構成3次元データ画像の高速処理が可能となった。加えて、輪郭抽出アルゴリズムをプラグイン可能にしたGUIソフトウェアを作成し、輪郭抽出した構造の2D・3Dによる立体表示を可能にした。
(2)低いSN比、画像強度の勾配、軸方向の低いPSFなどの扱い難い特徴をもつ再構成トモグラムに対応可能
  低いSN比、濃淡の画像についてはCnty改良による対処に加え、ユーザーの編集補助のために反転、二値化の基本的な画像処理を実装した。枝分かれや細長いオブジェクトの輪郭抽出については、膨脹型Cntyを用い、画像を局所的に拡大(線形補完)し、輪郭抽出を行った後に原画像の輪郭と合成を行う手法で実現した。特に、環形の細長いオブジェクトについては、膨脹型Cntyを用い、さらに輪郭が交差しない条件を付与する手法を組み合わせることで実現した。トラッキングについては、膨脹型Cntyと縮退型Cntyを組み合わせ、オブジェクトの局所的な(小さな)変化を検出する手法で実現した。
(3)利用者による選択と修正が可能な対話型インターフェースの実現
 Cntyのパラメータをユーザーが設定変更できるようにした。ユーザーによる輪郭の編集も可能にした。直感的な操作補助機能(必要な時に必要な機能のみを提供する)の実装は完了した。
V.評 価
画像データを高速で高精度化する画像アライメント自動化ソフトウェア、高速で高精度化する輪郭抽出アルゴリズム、輪郭を立体表示できるユーザー対話型GUIの開発が順調に進み、従来、手作業で3週間程度かかる輪郭抽出作業を1/10〜1/20に短縮することが可能となり、高速化、省力化の当初目標は達成されたことは評価できる。今まで時間がかかっていた輪郭抽出作業を一般化して医療診断、工業計測にも応用が可能となるばかりでなく、電子顕微鏡以外の医療CT用途等にも拡大でき、今後の市場規模拡大が大いに期待される。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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