資料4

開発課題名「質量顕微鏡法における空間特異的情報検出ソフトウェアの開発」

(平成21年度採択:ソフトウェア開発タイプ)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  松浦 正明【(公財)がん研究会ゲノムセンター情報解析グループ グループリーダー】
サブリーダー :  梶原 茂樹【(株)島津製作所 基盤技術研究所 主任研究員】
中核機関 :  (公財)がん研究会
参画機関 :  (株)島津製作所、浜松医科大学、慶應義塾大学、関西医科大学
T.開発の概要
これまでに開発してきた質量顕微鏡により得られる膨大な質量と位置のデータから、応用面で重要と判断される空間特異的な質量情報を抽出するため、顕微鏡座標情報を利用して要約した質量情報を抽出するソフトウェアとこれら要約された情報を比較分析しやすい新規解析指向型データベースの開発を行う。さらに、空間情報を基に、顕微鏡画像に対応する領域特異的な質量情報、細胞特異的な質量情報、顕微鏡画像に対応しない空間特異的質量情報のそれぞれを自動的に検出できる検出ソフトウェアを開発する。
U.事後評価における評価項目
(1)情報抽出ソフトウェアの開発
情報抽出ソフトウェア(IMSC)については、目標設定した5機能を全て装備した最終版を完成させた。第1機能は、目標値の最大62500個のスペクトルファイルを出力可能とした。第2機能は、情報縮約としてのピークファイルを高速に作成できるようにした。第3機能は、注目領域(ROI)の領域設定ファイルを用い、ROI別コモンピークファイルの自動出力を可能にした。第4機能は、ユーザーがコモンピーク抽出条件を再定義でき、高速にコモンピークを抽出できるようにした。第5機能は、最終的に抽出したROI別コモンピークを、GUIからのオプション指定によりデータベースへの自動出力を可能とした。
(2)情報抽出ソフトウェアと連動する新規データベースの開発
  新規データベースについても、目標設定した3機能を全て装備した。第1機能は、データベース操作に不慣れな実験者を想定しGUIを用いた実験条件・検体情報の入力機能を付与した。第2機能は、IMSCで得られたROI別コモンピークの自動格納機能であり、第3機能としての実験条件・検体情報・ROI別コモンピークの検索機能は、ユーザーによるデータ解析だけでなくデータ管理機能を付与したシステム構築に成功した。
(3)空間特異的情報検出ソフトウェアの開発
 領域特異的ピーク検出ソフトウェア(SPeaD-1)(コモンピーク発現ファイルを利用し、各ROIを判別するためのピークセットの抽出が可能)。細胞特異的ピーク検出ソフトウェア(SPeaD-2)、空間特異的ピーク検出ソフトウェア(SPeaD-3)の最終版が完成した。3個以上の隣接するスポット間で共通して大域的に発現しているピークを検出し、発現しているスポット情報と共に出力可能とする。質量毎に2次元の発現イメージ画像を出力する機能を新規に加え、初心者でも数10分で重要なピークを検出可能となり、飛躍的にプロトタイプ機のデータ処理に関するユーザビリティを高めた。
V.評 価
本プログラム「機器開発タイプ」で開発された、「質量顕微鏡」の膨大な二次元的質量データを処理して空間特異的な解析を行うためのソフトウェア開発である。ソフトウェアの開発によりデータ解析処理時間は、開発前と比べて3桁以上高速化され、効率化、省力化が飛躍的に向上して目標を大幅に上回っている。知的財産も確保できており参画機関の製品化計画も具体化されている。また、ユーザーとの連携を幅広く実施したため、当初目標にはなかった学術的な成果も出している上、質量分析が専門でない研究者でも簡単に操作できるようにユーザビリティも飛躍的に向上した。本ソフトウェアが搭載された装置により、医療分野の研究を促進するばかりでなく、広く生物化学分野等での利用が大いに期待される。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


前のページに戻る