資料4

開発課題名「臓器内部硬さ分布計測用MRE加振装置の開発」

(平成21年度採択:要素技術タイプ)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  但野 茂【北海道大学大学院 工学研究院 教授】
中核機関 :  北海道大学
参画機関 :  北海道大学(理)、千葉大学
T.開発の概要
磁気共鳴画像装置(MRI)を用いて体内の硬さ分布を計測する磁気共鳴弾性率測定法(MRE)のため、MRI装置内に体表面から臓器内部を効果的により深層の組織まで振動伝達が可能な加振装置を開発する。また、臓器を粘弾性体とした計測の数理的原理を構築し、測定の高精度化を図り、実用的な臨床機開発およびその制御・処理方法を開発する。
U.事後評価における評価項目
(1)臨床用MRI内で稼働可能な非磁性体変位型振動子による高効率縦波加振法の開発
 Barからなる縦波加振プローブを製作し、0.3TマイクロMRIに適用して0.5mmの大振幅かつ250Hzまでの高周波加振を達成した。また、複数振動子からなる加振装置を作成し、臨床MRI使用環境下において生体深部領域に高い周波数で弾性波を伝搬させる加振方法を検討し、多点入力加振の有効性を示した。スピンエコー法によるMRI撮像シークエンスに傾斜磁場制御プロセスを組み込み、マイクロMRIによるMRE計測を実現した。また、臨床用MRI撮影のシークエンスに複数振動子からなる加振装置の制御を組み込み、臨床用MRIによるMRE計測を実現した。
(2)生体模擬ファントムの開発及び硬さ分布を持つゲルファントムによるMRE精度評価法の確立
擬似生体ファントム用に生体軟組織と同等の物性となるゲルの合成条件を見出し、弾性率が10kPa以下かつ強度の高いPAAmゲルを合成した。これを踏まえ、マイクロMRE実験のファントム用大型ゲル(60×50×95mm)および、臨床MRE実験用大型ファントム(φ180×180mm)を作成することに成功し、各種ゲルの静的、動的力学特性ならびにMRE計測を実施した。
(3)MRE画像解析アルゴリズムの開発および高精度な数理解析に基づいたMRE計測技術の開発
 新しいMRE再構成法(修正積分法)を提案し、高精度かつ信頼性の高い弾性率解析を実現した。上記解析手法による再構成精度を、ノイズを印加したMRI画像を使ったミュレーションにより明らかにした。
(4)MRI顕微鏡実験による数理モデルの妥当性と縦波加振による硬さ測定の精度検定
 MRE撮影時の傾斜磁場制御信号と加振制御信号を同時測定し、高精度な磁場-加振制御が行われている事を実証した。MRE解析用のプラットフォームを開発し、各種画像処理、ノイズ除去に加え、修正積分法や従来の微分法などMRE再構成プロセスが選択可能なデータ処理プログラムを作成した。
V.評 価
肝臓と同等の軟組織ファントムモデルを独自に開発し、これに対する加振装置の開発では人体計測に必要な0.5mmの振幅を検証し、数値目標を達成した。さらに、画像解析・数理解析手法の最適化で計測精度を向上させたことは評価できる。しかし、当初目標の小動物や人体上腕の生体への適用については、加振の効果を示す結果が十分に示されていない。ファントムに対する加振データは、先行する研究グループと同等であることを示したが、生体に対する加振装置の実効性や、接続などの課題抽出が進んでおらず、加振効果を示すデータの取得および先行グループに対する優位性の検証など、先端的な研究現場への実用化に向けた要素技術の取り組みはなお今後の課題である。本開発は当初の開発目標をほぼ達成したが、本事業の趣旨に相応しい成果が得られなかったと評価する[B]。


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