資料4

開発課題名「中赤外光対応結像型2次元フーリエ分光法の開発」

(平成21年度採択:要素技術タイプ)

開発実施期間 平成21年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  石丸 伊知郎【香川大学 工学部知能機械システム工学科 教授】
中核機関 :  香川大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
医療、材料などさまざまな分野において、非接触で高感度、高空間解像度で赤外域の分光特性を計測するニーズが高まっている。本開発では、中赤外光対応の結像型2次元フーリエ分光法を開発し、高感度分光分析装置への適用を目指す。その吸光特性から多様な成分を特定可能である中赤外領域へ光学系を拡張することにより、無侵襲血糖値センサや集積回路の異物成分分析などの、多様な用途への応用展開が期待される。
U.事後評価における評価項目
(1)生体膜分光断層像計測光学特性改善
 光学的に平坦な窓材に指などの被測定物を押し当てて斜方照明することにより、皮膚表面からの強い拡散反射光を受光することなく、皮膚内部からの微弱散乱光のみを検出する方式を考案している。開発手法を用いて、マウス耳の生体組織分光断層像取得実験を行い、皮膚表層近傍内部の2次元可視光分光分布計測結果から、血管領域を確認できている。
(2)広視野分光イメージング光学特性改善
輻射光の位相シフト干渉の鮮明度を改善するために、高い数値開口数を有する分光光学系専用の中赤外対応レンズ(材質:ゲルマニウム)を新たに設計製作した。開発した光学系を用いて、農作物の光合成によるグルコース生成状況を非破壊で広視野計測する分光イメージング装置を想定した試験を行い、広視野で葉の中赤外分光イメージングデータの取得に成功している。また、広視野分光イメージングの可能性実証実験として、観葉植物自体の温度から発生する輻射光である中赤外光の分光イメージングにも成功している。
V.評 価
眼底検査など、医療装置としての応用を視野に入れた、小型フーリエ変換分光装置の要素技術開発である。赤外分光イメージングとMEMS技術との組み合わせで小型の生体膜分光診断装置を開発し、原理的な新規性には若干欠けるものの、マラリア感染赤血球で1,600nm付近の吸光度に違いを見出すなど、応用開発として注目される成果を挙げている。実用化に向けた取り組みも順調に行われており、市場性についても期待出来る。開発機関中に特許も7件出願しており、本事業趣旨に合致した成果を挙げている。これらを踏まえた実用化開発が今後進むことを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨にふさわしい成果が得られたと評価する[A]。


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