資料4

開発課題名「GEMによる超高感度・大面積ガンマ線イメージセンサー」

(平成20年度採択:要素技術タイプ)

開発実施期間 平成20年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  房安 貴弘【長崎総合科学大学 情報学部 准教授】
中核機関 :  長崎総合科学大学
参画機関 :  東京大学、国立文化財機構 東京文化財研究所、サイエナジー(株)
T.開発の概要
現在、硬X線やガンマ線によるイメージングは、反応効率の低さから線源の大型化・強度化が避けられないが、GEM(Gas Electron Multiplier) の発明により、高感度かつコンパクトなイメージング測定が可能になってきた。本開発では、GEM を用いた超高感度ガンマ線センサーと高密度実装システムLSI とを組み合わせることにより、大面積かつ高精度なイメージングを実現する。ポータブル非破壊検査や陽電子断層撮影(PET)などに使用できる。
U.事後評価における評価項目
(1)電荷・時間同時計測システムLSI の開発
 1チップ当り8ストリップの読み出しが出来るLSI開発を行い、特性評価を行った。また、専用の基板を製作して放射線読み出しを行いながら、アナログ/デジタル各回路の特性評価を終えた。10Mサンプル/秒での読み出しは困難であるが、5Mサンプル/秒までの使用に耐えるとの結果を得た。完全な出来ではないものの、目的を満たせるLSIを得ることに成功した。
(2)XY電荷分割ストリップ基板の設計開発
放射線計測実験から、抵抗陽極無しでも2ストリップ程度の電荷拡がりが認められた。高分解能を要する医療用等の分野も含めて、広範な応用分野を想定していたが、重量構造物の非破壊検査に焦点を絞り、基板設計を行った。
(3)高速処理読出し回路の設計開発
3回の基板試作を通じ、開発LSIに適合した読み出し回路を完成させた。また、本基板に適合するデジタルプロセシング(FPGA)プログラムの開発および、コンピュータでのデータ読み出しプログラム(DAQ)を完成させたが、達成したサンプリング速度は5MHzであり、時間分解能は実質的に50ns程度と見られる。そのため完成度は80%程度である。しかしながら、少なくとも時間分解能については、FPGAまたはDAQで発生しているか、あるいは外来ノイズ等の影響である可能性があり、この原因を取り除くことで時間分解能10ns以下が達成できることが判明した。
(4)検出部開発
 GEM、光電コンバータ、読み出し回路ともに200mm角での試作が完了した。コインシデンスの不具合が未解明であり、コンバータ効率の見積もりが不十分であるため、未だ100mm角での実証試験のみである。
(5)放射線を用いたシステム試験
 東京文化財研究所に設置されている 320kV 管球を用いて試験を行い、320kV エックス線の検出には成功し、ストリップによるイメージングは実証できた。X-Yコインシデンスに何らかの問題があり、単純でないパターンに対しては問題解明が必要である。
V.評 価
コンクリート構造物の中を見るなど、X線では見られないものをガンマ線でみるという方法のための200mm×200mmという大型のGEMの開発である。仏像を対象とした場合、塑像など従来の技術で見えなかった物を見ることが可能となる。装置を可搬型にすることを視野に入れたため、用いた光源のエネルギーに限度があり、イメージングサイズは当初目標の1/4の100mm×100mmまでしか実証できなかった。また、検出効率も当初目標の10%に対し、3桁から4桁小さい値しか得られなかった。今後は小型で高エネルギーのX線源を用いることで課題を解決し、可搬型の非破壊検査装置の製品化につながることを期待したい。本開発は、当初の開発目標を達成できなかったと評価する。今後、未達成事項を早期に解決し、本開発で得た知見も活用し、着実な開発を進めることを期待したい[C]。


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