資料4

開発課題名「半導体バイオセンシング技術による1チップゲノム解析」

(平成20年度採択:要素技術タイプ)

開発実施期間 平成20年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  坂田 利弥【東京大学大学院 工学系研究科 准教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
半導体技術に基づく小型化・集積化電界効果DNAチップを作製することにより超並列DNAシーケンシングを実施し 1チップゲノム解析を実現する。その実現により、主に研究現場では、増加するゲノム解析生物の網羅的DNAシーケンシングのみならず疾病などの個人差に関わる一塩基多型(SNP)解析の高スループット化が飛躍的に促進される。さらに、小型・簡便な遺伝子機能解析システムの構築を目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)遺伝子トランジスタの試作
 超高速DNAシーケンサー使用の目的で、デバイ長内で50塩基伸長することが可能なナノ構造ゲートとして、@Auナノ粒子ゲート、Aナノピラー構造ゲート、B磁性微粒子-DNA複合体利用の機能化ゲート、CDNAポリメラーゼナノ構造ゲートの4種のゲートトランジスタを設計し、試作した。
(2)遺伝子トランジスタによるDNAシーケンシング
4種の遺伝子トランジスタを検討した。@Auナノ粒子ゲートは、Auナノ粒子の点在化による計測安定性の低下が課題であった。Aナノピラー構造ゲートは、計測感度がいいが ナノピラー構造の作成に時間とコストがかかり実用的ではない。B磁性微粒子-DNA複合体利用の機能化ゲートは、計測可能であるが 一塩基毎の電気シグナルのばらつきが課題であった。CDNAポリメラーゼナノ構造ゲートは、最も実現の可能性があるが、現時点で30塩基計測までで、残念ながら50塩基の計測を実現できていない。
(3)並列DNAシーケンシングシステムの製作
ナノ構造ゲートが未完成なので、残念ながら デバイスの集積化まで検討できなかった。自動化システムの検討として、マイクロ流路を利用したシリンジポンプによる計測、液送システムを作製した。
V.評 価
超高速DNAシーケンサーを開発し、半導体バイオセンシング技術の確立を目指す課題である。高速化を実現する為 読取塩基長を向上させる必要があり、開発開始時に実現していた10塩基長を50塩基長まで伸長することを実現するため、4種類のナノ構造ゲートを設計し 検討したが、デバイ長領域内での50塩基伸長は達成できなかった。競合技術の開発が世界的に急速に進展しており、昨年米国で 類似技術を使った超高速DNAシーケンサーが実用化された。シーケンサーそのものを追求していくより、むしろ本技術の特徴を生かした新たな応用分野を検討することが望ましい。本開発は、当初の開発目標を達成できず、本事業の趣旨に相応しい成果は得られなかったと評価する[B]。


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