資料4

開発課題名「難易度の高いタンパク質試料の調製と標識技術の開発」

(平成20年度採択:要素技術タイプ)

開発実施期間 平成20年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  大木 進野【北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアルテクノロジーセンター 教授】
中核機関 :  北陸先端科学技術大学院大学
参画機関 :  石川県立大学
T.開発の概要
ジスルフィド結合を持つタンパク質、リン酸化などや翻訳後修飾を受けたタンパク質、膜タンパク質など、従来法では調製が難しいタンパク質試料を簡便に大量調製する汎用技術を確立する。目的タンパク質の発現には、ウイルスをコードする遺伝子と植物細胞を利用する。
U.事後評価における評価項目
(1)各種シグナル配列を用いた新規ベクターの構築
 小胞体へ移行させるシグナル配列を付加したタンパク質発現系および分泌シグナル配列を付加したタンパク質発現系を構築した。特に、従来方法で数ミリグラムの試料を得るためには1リットル程度の培養を必要としたタンパク質(DHFR、CPI-17)について、50〜100ミリリットルの培養で十分な量の試料を得ることができた。
(2)調製難易度の高いタンパク質の調製
これまで調製が困難であったジスルフィド結合を持つタンパク質(BPTI、SSI、AFP1)および疎水的なアミノ酸残基を多く含んだ繰り返し配列を有する膜タンパク質の大量調製が可能となった。AFP1については、糖鎖付加後のタンパク質を調製することにも成功した。また、当初の計画にはなかった植物のペプチドホルモン(stomagen、EPF1、EPF2、これらのキメラ、EPS3)の発現にも成功した。いずれも、NMR測定に必要な量(mgオーダー)を得ることが可能であり、他の発現システムとは異なり、可溶化分画に目的タンパク質を発現させることができた。これらタンパク質の一部についてNMRスペクトルを測定した結果、すべて正しいフォールド(立体構造)を有していることを確認した。
(3)各種安定同位体標識やフッ素化合物等の非天然アミノ酸を導入する技術の開発
高分子タンパク質のNMR解析用に、13C標識、15N標識および13C・15N二重標識(均一標識あるいは部位特異的標識)する方法を開発した。また、2H・13C・15N三重標識も可能となった。さらに、13C標識されたアミノ酸(Ile、Leu、Val)あるいはより安価な13C標識アミノ酸代謝中間物を培地に加えることによるメチル基選択標識法を確立した。非天然アミノ酸に関しては、培地にセレノメチオニンを入れて培養することにより、X線結晶構造解析における位相問題を解決するのに有用な目的タンパク質を調製することも可能となった。
V.評 価
本課題は、従来法では調製が困難であったジスルフィド結合を持つタンパク質、糖鎖が付加されたタンパク質や膜タンパク質などの大量発現と、それらタンパク質を解析するための効率的な各種標識法を確立することを目的とした要素技術開発である。目標とした各要素技術の開発に成功し、比較的安価で広範な応用が期待できる独自のタンパク質高効率発現・標識システムを構築することに成功した。タンパク質の機能を解析するには、生体内と同様の活性を有するタンパク質の調製が非常に重要であるが、この点においても特筆すべき成果をあげたことは高く評価できる。また、開発成果の事業化へ向けた取り組みに関しても高く評価できる。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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