チームリーダー : |
長澤 親生【首都大学東京大学院 システムデザイン研究科 教授】 |
サブリーダー : |
塚本 誠【英弘精機(株) 環境機器事業部技術研究所 所長】 |
中核機関 : |
首都大学東京 |
参画機関 : |
英弘精機(株)
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- T.開発の概要
- 大気中の二酸化炭素(CO2)は最も重要な温暖化気体であり、地球温暖化の進行を測定し、その対策を考える上で、その分布と時間変化の実態を十分に把握することが重要である。このためには、大気中のCO2濃度の空間分布を高頻度・広域・高精度で測定する必要があるが、直接的な測定については、現状では地上観測がほとんどであり、高度分布の測定が極めて不足している。レーザー光を用いた能動的な観測手法であるライダーは、地上からの遠隔測定で大気中の微量成分や気象要素の鉛直分布を測定することが可能である。本開発では、地球温暖化予測研究を推進するため、これまで実現が困難であったCO2濃度、風向・風速、気温の鉛直分布を同時に観測可能なライダー技術の開発を行う。
- U.事後評価における評価項目
- (1)高出力送信レーザーの開発 波長同調システムの開発
- PPMgSLT-QPM素子の利得が高いことに着目し、共振器を使用しない単純な方式として、OPG方式のレーザーを新たに考案した。このレーザーは波長計の絶対精度0.15 pm(40MHz)以下の安定度を示した。さらに高出力化を図るためにOPGの後段にOPAを2段追加したシステムを開発した。高精度な波長同調システムとしてCO2セルを用いた波長制御システムを開発した。14時間にわたり高精度の波長同調が得られ、当初目標以上の成果が得られた。
- (2)受信系の開発
- 昼間観測のために透過帯域が狭く透過率の高い特性を持った狭帯域フィルターを入手し、実際に観測に用いた結果、太陽南中時でも背景光が十分小さくなることが確認され、昼間のCO2観測が可能であることを確認した。二酸化炭素、気温の鉛直測定のための大口径受信望遠鏡として、コンテナへの積み込みを考慮した鏡筒が短い口径60cmの反射望遠鏡を設計し、水平分布観測のためのスキャニング機構で斜めにレーザーを打ち出すことにより視線方向の風速が測定可能となった。
- (3)多要素計測ライダーの解析アルゴリズムの開発 多要素計測ライダーのインテグレーション
- 送信系と受信系を統合し、多要素(CO2濃度、気温、風向・風速)の鉛直分布同時観測可能なライダーを開発した。気温観測に関しては、CO2濃度測定に用いている2波長に、気圧不動点を追加した3波長システムに拡張した。小型望遠鏡と大口径望遠鏡を併用することにより測定高度領域を拡大した。さらに気温の同時観測により従来の地上気象データより求めていたCO2濃度に比べて測定精度が向上する繰り返し演算アルゴリズムを開発した。これらを、外形寸法長さ6.1m、幅2.4m、高さ2.6mの移動観測可能なコンテナ(トレーラ)の内部に配置し、動作を確認した。高度2km以下は低高度受信系で高度分解能500m、高度2km以上は高高度受信系で高度分解能1000m、時間分解能1時間で、昼間はCO2の高度プロファイルを6kmまで、夜間は高度8kmまで観測が可能となった。
- (4)測定精度の評価手法の確立 システムの測定精度検証
- ライダーによるCO2濃度測定精度を検証するために、建物の屋上に設置したCO2分析器との同時比較観測、航空機サンプル観測、CO2分析器を搭載した係留気球を使って上空100mに浮揚させて、CO2濃度検証を行った。いずれの方法でもデータはよく一致し、開発装置の精度が検証された。風観測に関しては、地上に設置した超音波風速計とライダーによるレーザー視線方向の風速を比較した。両者は0.3m/sの精度で一致していることが確認出来た。
- V.評 価
- 地球温暖化対策のために必要な予測モデル構築のためには、CO2濃度の高度分布情報を精度良く測定する必要がある。そのための車載型多機能ライダーの開発を行った。波長1.6μm付近の3波長を高精度に発・受信し、CO2の吸収強度を測定するシステムを開発し、実用に堪える精度の観測結果を得た。実際に本システムを車載・移動した場合のデータは取得されていないが、固定して設置された測定環境では良好なデータが得られており、今後、多数のユーザーが本システムを利用し、有効なデータを取得することを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。
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