資料4

開発課題名「全方位高精度リアルタイム撮像ライダー装置」

機器開発タイプ(領域特定型)
【一般領域】地球環境問題に関わる環境物質のオンライン多元計測・分析システム

開発実施期間 平成20年10月〜平成24年3月

チームリーダー :  佐々木 真人【東京大学 宇宙線研究所 准教授】
サブリーダー :  武山 芸英【(株)ジェネシア 代表取締役】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  (株)ジェネシア、茨城大学、千葉大学
T.開発の概要
大気の組成の高度分布を遠隔計測する装置としてライダーが有効である。しかし、従来のライダーでは光学系の視野の狭さから大気環境の3次元分布測定は困難であった。本開発では、宇宙線撮像監視用に開発された超広視野かつ分角精度にて同時高速撮像できる受光装置と高速走査できるレーザー射出装置を応用し、大気環境を高速高精度で3次元リアルタイム撮像監視する装置(3D-RTIL)を実用化する。交差点における自動車排ガスエアロゾル、ビル屋上から監視した都市エアロゾルや広域オゾン層の実証観測を行う。
U.事後評価における評価項目
(1)要素開発 
 世界最大画素数(64x64)のトリガセンサ、世界初の部分露光・部分読み出し可能なファインセンサ、太陽・月の背景光を効率よく排除可能なロッドレンズアレイ、伝送精度・輝度の保持可能な小型軽量の独自光分配型伝送光学系を開発した。
(2)可搬型3次元リアルタイム撮像ライダーの開発と実証
  反射率、補正レンズ透過率とも85%以上の望遠鏡、走査速度36,000度/秒で射出精度 全角0.14度を実現した レーザー射出制御装置を開発した。また、1秒以内に106ピクセル相当の逆解析可能な 即時画像データ解析ソフトも開発した。上記装置による 排ガス側方散乱光観測で、3次元動画表示が可能であった。また1分毎の測定による可視化も可能であった。
(3)全方位3次元リアルタイム撮像ライダーの開発と実証
受光装置全体の解像度3.9±0.2分角の望遠鏡、射出精度 4〜5分角の3波長レーザー射出装置を開発した。上記 3波長レーザー装置による 都市広域大気の撮像により、3次元的な雲の動きを捕らえることができた。また、側方散乱の解析により、雲の有無による3次元像の違いを確認することができた。
V.評 価
宇宙線観測用高精度・広視野角カメラの最先端技術を応用して、小型可搬型と広域据え置き型の3次元リアルタイム撮像ライダーを開発した。両者とも側方散乱と後方散乱の両モードが使える。東日本大震災の影響で、野外観測(実証実験)が計画通り進まず、大気科学上の新たな知見を抽出するに至っていない。しかし、オゾン層の動態観測研究等の学術調査分野だけでなく、隣国からの大気汚染流入の網羅的監視(スペックアップ)や空港での雲底計、乱流モニター(スペックダウン)など、今後幅広い展開を検討できる技術となっている。今後の実用化に向けた取り組みが望まれる。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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