資料4

開発課題名「MSnスペクトルから糖ペプチドを推定するソフトウェアの開発」

(平成22年度採択:ソフトウェア開発タイプ)

チームリーダー :  天野 純子【(公財)野口研究所 研究部 糖鎖生物学研究室 室長】
サブリーダー : 高羽 洋充【東北大学大学院 工学研究科 准教授】
中核機関 :  (財)野口研究所
参画機関 :  東北大学
ライフィクス(株)
T.開発の概要
 これまでに独自のピレン誘導体化と新規プレートを基盤にした超高感度糖ペプチドMALDI−MSnシステムを開発し、従来では検出困難であった20pgの糖ペプチドが測定可能となった。本課題では、スペクトルから瞬時に構造を解明するソフトウェアを開発する。従って、糖鎖科学の専門家でなくても、どのタンパク質の、どのアミノ酸に、どのような糖鎖構造が結合しているかを決定することが可能であり、構造と機能の解明が容易になるので診断や治療に役立つことが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)確率に基づくスペクトルシミュレーションプログラムの開発
 糖鎖の構造データ(分子量など)と、構造中の各部位(結合、水酸基)に割り当てられたフラグメント生成に関する3種の確率(切断確率、脱プロトン確率、電子移動確率)を入力データとして、得られるスペクトルを推定するプログラムを開発した。
(2)分子量から分子組成を算出するプログラムの開発
 分子量が大きくなると候補数が莫大になる問題点があったが、分子量、組成、部分構造の絞り込み条件を付けることで問題を解決しつつある。グラフィカルツールを導入、抽出したデータベースを用意し、分割して検索するなどの改良を進めている。
(3)量子化学計算を利用した3種の確率算出プログラムの開発
 量子化学計算の方法として、密度汎関数法および東北大で開発したタイトバインディング量子計算法のプログラムを糖鎖用にチューニングして用いている。負イオンのMSスペクトルと負イオン化安定エネルギーの間に相関性を見出した。この方法で予測したスペクトルと実測スペクトルを比較すると両者には良い一致がみられている。
(4)実測データからの確率類推プログラムの開発
遺伝アルゴリズムによる確率類推プログラムを開発し、10サンプルの実測スペクトルデータで検証しており、一部では高い再現性が得られたが、まだ再現性が不十分である。3種の確率間の相関性を全く考慮せずにフィッティングしているが、実際のフラグメント生成では相関があると仮定し、相関アルゴリズムを検討している。
V.評 価
 本事業の「要素技術タイプ」の開発成果を基に、質量分析スペクトルから糖ペプチド構造を推定するプログラムの開発が目標である。開発はほぼ順調に進捗しており、主要な目標も達成していると言える。開発するソフトウェアの市場性も大きいと期待される。しかし、最終目標が明確でなく、経験則をどこまで適用するか等不明部分が多く、オープン化したときにユーザーに使い易いプログラムにするようシステム仕様を明確にして開発を着実に推進すべきである [A]。


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