資料4

開発課題名「対称を利用したタンパク質結晶化促進タグの開発」

(平成22年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  姚 閔【北海道大学大学院 先端生命科学研究院 准教授】
中核機関 :  北海道大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
X線結晶構造解析法は、タンパク質分子の立体構造を原子の分解能で正確に決定するための最も優れた方法だが、結晶化という障壁を乗り越えなければならない。一般に、対称性の高い分子は結晶化確率が高いことが、理論的にも統計的にも証明されている。この事実に基づき、本開発では、タンパク質分子を二量体化あるいは三量体化することで分子に2回あるいは3回軸対称を付与し、結晶化を促進するような要素技術(ペプチド性タグ)の開発を目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)大腸菌を用いて融合蛋白質の大量調製
 計算機シミュレーションで選択した3種類の3回軸対称タグ(3RS)、5種類の新規2回軸対称タグ(2RS)の中の2種類を融合させたモデル蛋白質を1mg以上調製することができた。これを踏まえ、既存の3RSを融合させた1、2種類の応用蛋白質を1mg以上調製することができた。
(2)タグが多量体形成に及ぼす影響の評価
 ゲルろ過クロマトグラフィーと示差走査熱量分析(DSC)により、3RSの多量体化能、安定性を評価し、それによって結晶化実験へ進むサンプルを絞ることができた。ゲルろ過クロマトグラフィーとDSCにより、2種類の2RSの多量体化能、安定性を評価し、それによって結晶化実験へ進むサンプルを絞ることができた。
(3)融合蛋白質の構造解析
調製できた2RSおよび3RS融合モデル蛋白質の結晶化スクリーニングを行うことによりタグが結晶化に及ぼす影響を評価することができた。得られた結晶の構造解析を行い、その結果から、初期2RSを1〜2種類、初期3RSを2種類程度に絞ることができた。
V.評 価
2回あるいは3回軸対称ペプチドタグを融合させることで、タンパク質の結晶化を促進させ、X線結晶構造解析のための質の高い結晶を得ることができる技術を開発するのが目的である。ポテンシャルエネルギー計算による候補ペプチドタグの絞り込み、ペプチドタグ融合タンパク質発現ベクターの作製、モデルタンパク質を用いたペプチドタグ融合タンパク質の大量調製、結晶化、構造解析などのうち、当初の目標数値を上回る項目もあり、目標はほぼ達成できている。今後、これまで結晶化が難しかったタンパク質や結晶化できなかったタンパク質の構造解析で、実際に高分解能の構造を得ることで、本手法の有効性を示し、開発の進展を期待する。また、成果の特許出願等については十分に検討し、成果の実用化については企業等との連携をも視野に入れ、開発を着実に推進すべきである[A]。


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