資料4

開発課題名「ナノプローブ形成用電界電離型ガスイオン源の開発」

(平成22年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  畑 浩一【三重大学大学院 工学研究科 教授】
中核機関 :  三重大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
 Ga液体金属イオン源(Ga−LMIS)を搭載した現行の集束イオンビーム装置では、試料観察・加工時に照射Gaイオンによる試料汚染が深刻な問題となっている。またGaイオンのエネルギー拡がりに起因する色収差が、集束特性悪化の原因になっている。本課題では、Ga-LIMSに替わる高輝度イオン源として電界電離型ガスイオン源を開発し、不活性な重希ガスイオン(Ne,Ar)の高輝度ビーム形成を実証すると共に、実用化に向けてビーム電流の安定度の向上およびエミッターの長寿命化を図る。
U.中間評価における評価項目
(1)TOF(Time Of Flight)によるイオン種・価数の評価およびエネルギー分布測定
 質量分解能500amu(atomic mass unit;原子質量単位)以上という目標値に対して、質量分解能325amuを得ているが達成数値は加速電圧8.9kVでの値であり、イオンを減速することで数値目標は達成可能と見込まれる。
(2)希ガスイオンビームの安定度・エミッター寿命評価
 FIB(集束イオンビーム)増設・動作確認については、目標とした真空度は達成している。エミッター冷却温度25K以下については、ネオンの三重点24.5Kを基に数値目標を設定したが、実用上はヘリウム冷凍機の振動がFIBの集束特性に悪影響を与えるため、液体窒素温度(77K)で使用することが通例となっており、液体窒素温度で十分である。印加電圧12kV以上については、15kV以上印加可能となり、これは試料エミッターを絶縁するセラミック表面をメタライズすることで、高圧印加時の放電が無くなったことにより達成した。
(3)希ガスイオンビームの輝度・集束特性・加工特性の評価
Neで分解能100nm以下のSIM(走査イオン顕微鏡)像検出については、像は検出されているが、試料上でのプローブ電流が小さく、まだ光軸合わせにさらなる調整が必要である。集束ビーム径の目標値である、アルゴンで直径100nm以下については、当初、比較的容易なネオンを原料ガスに用いてSIM像検出を行っていたため、アルゴンでのビーム径評価については予定より遅れている。
(4)GFIS(ガスフェーズイオン源)アセンブリーの改良
イオンエミッター作製形状の再現性の確立については、エミッターの電解研磨条件を検討することにより、シャンクテーパー角4°以内を再現性良く作製可能となった。イオン原料ガス以外の不純物ガス種の特定は、1×10-9Pa程度の分圧で炭化水素が存在することを確認したが、炭化水素の存在は真空槽がまだ枯れていないことを示しており、今後、装置のベーキングを充分に行うことにより除去可能である。
V.評 価
高安定・長寿命なエミッターを開発し高輝度希ガスイオンビーム形成を実証することで実用性が高い電界電離型イオン源GFISプロトタイプの開発を進めている。電界電離型ガスイオン源から放出されるアルゴンのイオン価数のTOFによる評価、独自の手法による再現性の良い三原子終端エミッター作製や、希ガスイオンビームの集束特性・加工特性を評価する装置の移設・立ち上げ・動作確認も順調に実施されている。以上の結果から、本開発課題は、当初の目的通りに進捗しており、当初の全体計画に沿って推進すべきである[A]。


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