資料4

開発課題名「生物画像のオーダーメイド分類ソフトウェアの開発」

(平成22年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  馳澤 盛一郎【東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  東京理科大学
T.開発の概要
 生命科学・医学における撮像技術の発達と画像の多様化・多量化によって、汎用性の高い画像評価法が研究・応用現場の緊急ニーズとなっている。オーダーメイドな画像評価システムを目指し、進化型計算と自己組織化写像を用いて、人間の判断に匹敵する高い可塑性を備える自動画像分類法を開発する。本手法により、画像診断や化学物質評価・創薬スクリーニングなどの現場で広く普及することが期待される。
U.中間評価における評価項目
(1)局所特徴抽出器の開発(特徴候補の創出)
 色および輝度勾配方向の空間分布を捉える局所特徴抽出器の実装と拡張を進めた。その結果、シングルバンド画像(MRIと単色の顕微鏡画像)から最大706次元、マルチバンド画像(デジタルカメラ画像、多重蛍光染色試料の顕微鏡画像)から最大3530次元の特徴ベクトルを、それぞれ ランダムフォレスト法(機械学習アルゴリズム)を用いた「教師付き学習*」工程での入力に供することが可能となった。これらの次元数値は、いずれも個別のカスタマイズ化された画像分類・評価ソフトウェアが用いることのできる画像特徴の最大数に相当する。 処理精度を確認するため、抗ホルモン剤のラット精巣への影響を評価するMRI画像群200枚を訓練画像とし、テスト画像153枚を対象に薬剤影響の有無を自動判定した結果、90.2%の正答率を得た。また、他研究グループより公開されたA-431(ヒト癌細胞の1種)動物培養細胞中のSNX1(膜結合タンパク質の一種)の共焦点画像(蛍光画像)群32枚を対象に交差検定法によりノコダゾール処理区と対照区を自動判定した結果、98.1%の正答率を得た。
*与えられたデータを「ガイド」として、以下のデータを処理する機械学習アルゴリズム
(2)マルチバンド画像対応
 8種の色空間の間の相互変換のためのモジュールを作成した結果、これらの色空間であわせて19座標上で評価可能となった。また、赤外線カメラから得られる熱画像も評価可能であることを検討した後、マウスのサーモグラフィ動画像(2万フレーム、撮影時間2時間相当)を対象としたマウス体表面温度の連続計測のための領域抽出ソフトウェアの開発を進めた。現在のところ、各フレームでの領域抽出に要する時間は平均28ミリ秒であった。これを動画像全体に換算した場合、専門家による目視抽出で1時間要するのに対し、本ソフトウェアでは9分20秒で抽出できたことを意味する。
V.評 価
生命科学・医学・農学の研究および応用分野で用いられる多様な画像にオーダーメイドに対応できる、汎用性をもった画像自動分類・評価ソフトウェアの開発である。開発は順調に進捗し、中間評価時点での目標はすべて達成されている。予備的ではあるが、多方面での応用実績を示しており、特に、当初の目的にはなかった動画像からの特定領域を短時間で抽出可能とするソフトウェアの開発に目途が立ったことは高く評価できる。今後は、画像機器に搭載する世界標準ソフトに位置づけるという最終目標の達成にむけて、着実に開発を推進すべきである[A]。


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