資料4

開発課題名「低温光共振器を用いた超高安定光源の開発」

(平成22年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  坪野 公夫【東京大学大学院 理学系研究科 教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  ネオアーク(株)
(独)産業技術総合研究所
高エネルギー加速器研究機構
T.開発の概要
 低温(10K)光共振器を基準にしてレーザー周波数を制御することにより、超高安定なレーザー光源システムを実現する。本課題では、精密計測、光学技術、低温技術の高度な技術を統合することにより、高性能かつ産業応用を視野に入れた汎用機器を開発する。このような先端的なレーザーシステムは、光格子時計、超高分解能分光、高精度ドップラー測距などの先進分野でも強く求められている。
U.中間評価における評価項目
(1)外部共振器ダイオードレーザー(ECDL)の開発
 回折格子を用いた外部共振器を有し、安定性と制御性に優れたレーザーを製作した。発振可能な波長領域は1,350-1,570nmであり、ダイオード電流750mA、波長1,396nmにおいて、100mWの発振が可能であった。周波数変調の感度としては、波長変化で表して-1.5pm/Vが得られた。製作したECDLの出力安定度について評価した結果、長時間および短時間における出力パワーの安定度は0.3%以下であり、十分安定な出力特性が得られたことが示された。次に、今回製作した2台のECDLの間のビート周波数を測定することによりフリーラン状態での周波数安定性を評価した結果、中間評価時の目標とする短時間領域におけるアラン偏差(10-8)を得ることに成功した。また、安定化後の周波数揺らぎのアラン偏差は10-10以下であった。
(2)低温光共振器の開発
 光共振器の素材を決定するため、機械的Q値の測定、接合部の特性などについてサファイアとシリコンの比較検討した結果、光共振器の素材としてシリコン単結晶を用いることとなった。有限要素法を用いた数値計算により、共振器の形状や支持点の位置の最適値および光共振器を目的の低温に到達するまでの時間(2〜3時間)を求めることができた。これらの計算結果をもとに、光共振器の最終的なデザインを決定した。また、同様に、低振動冷凍機およびクライオスタットについても、設計を完了した。
V.評 価
低温光共振器を周波数基準に用いた超高安定化レーザーの実現を目指した要素技術開発である。プレ安定化レーザー用光源の作製に成功し、有限要素法によるファブリ−ペロー光共振器および低温化用クライオスタットの設計も終了した。中間評価のマイルストーンとして設定した各項目については、いずれも数値目標を達成しており、着実に成果をあげていると評価できる。今後、シリコン単結晶の精密加工や冷温化装置の振動によるノイズの低減に留意しながら、実際の低温共振器内での発振にむけて着実に開発を推進すべきである[A]。


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