資料4

開発課題名「簡易操作型電気泳動チップによるバイオ分析技術の開発」

(平成22年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  大塚 浩二【京都大学大学院 工学研究科 教授】
中核機関 :  京都大学
参画機関 :  弘前大学
T.開発の概要
 微量生体試料の電気泳動分離を簡便な操作で実現するためのマイクロデバイスを開発する。直線状微小流路の注入口に試料溶液を滴下し、単電圧を印加するだけで試料成分を濃縮・分離できる要素技術を進展させ、検出感度を10,000倍以上に向上させる。さらに、チャネルアレイデバイスおよび二次元分離デバイスへと発展させ、MS検出との統合により生体機能解析のハイスループット化に貢献できるシステムの構築を目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)試料濃縮−分離デバイスの基礎的性能評価終了
 電気浸透流(EOF)の速度変化を利用したオンライン試料濃縮法(LVSEP)を、直線状チャネルにおけるマイクロチップ電気泳動に適用した。標準試料(グルコースラダー)を用いた分析条件の最適化検討では、濃縮率7,100倍、検出下限200ppt、分離度1.7以上を実現し数値目標を達成した。糖鎖試料濃縮技術の確立では、濃縮率4,700倍を実現し、達成目標を上回った。タンパク質濃縮技術の確立では、α1-酸性糖タンパク質の濃縮率1,300倍を実現し、達成目標を上回った。
(2)プロトタイプ型二次元分離デバイス一次試作品の完成
 一次元目チャネルで濃縮・分離した試料成分を二次元目チャネルに導き検出する二次元分離デバイスの構築を検討し、試料成分の二次元目チャネルへの導入および300秒以内での検出に成功した。検出下限100ppbを実現し、達成目標を上回った。
(3)分離濃縮デバイス−MSスプレー接続システム一次試作品の完成
100V/cm以上の電場印加条件で、試料成分を分離チャネルからMS(質量分析)用のエレクトロスプレー先端まで導くことが出来、インフュージョン分析による120秒連続測定を実現し、達成目標を上回った。
V.評 価
 LVSEPという試料濃縮法をマイクロチップ電気泳動に適用し、高感度検出を可能にする技術の開発である。開発は順調に進んでおり、試料濃縮−分離デバイスの基礎的性能評価、プロトタイプ型二次元分離デバイス一次試作品の完成、分離濃縮デバイス−MSスプレー接続システム一次試作品の完成と、全ての項目で数値目標を達成している。今後は、ポリビニルアルコール(PVA)表面修飾の歩留まりを改良する等、再現性の良い技術として確立し、糖鎖やタンパク質等、生体成分分析への適用を考慮に入れ、本技術の実用化に向けて開発を着実に推進すべきである[A]。


前のページに戻る