資料4

開発課題名「細胞内温度計測用プローブの開発」

(平成22年度採択:要素技術タイプ)

チームリーダー :  内山 聖一【東京大学大学院 薬学系研究科 助教】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  奈良先端科学技術大学院大学
T.開発の概要
 細胞内で起こる様々な生命現象を温度の視点から詳細に解明するため、高い温度分解能と空間分解能を備えた細胞内温度計測用蛍光プローブを開発する。また、簡便に誰でも使用可能な細胞内温度計測技術の確立を目指し、これらの分解能を備え、さらに培地から細胞質への移行能、各細胞内小器官への移行能を付加したプローブを開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)細胞内温度計測用プローブの分解能
 温度分解能については、動物細胞COS7(アフリカミドリザル腎臓由来細胞)を用いた温度計測実験において、29〜39℃の温度範囲で温度分解能0.18〜0.58℃を達成した。今後は、動物細胞以外の酵母細胞、植物細胞を用いた温度計測実験において、温度分解能を評価すると共に、広い温度範囲におけるさらなる温度分解能の向上を目指す。また、空間分解能は、COS7、SYT001(野生型パン酵母)を用いた温度計測実験において、顕微鏡の回折限界に匹敵する空間分解能200 nmを達成した。空間分解能向上のために採用した「温度計測用プローブ中に親水性のイオン構造を増やし、細胞中での凝集を防ぐ」という手法は、一般化されうるものであり、目標を達成した。
(2)細胞内温度計測用プローブの細胞移行能
 培地から細胞質への移行能につき、SYT001を用いた実験において確認した。培地から細胞質への5分以内への移行を達成した。詳細なメカニズムについては現在のところ不明であるが、プローブ内のカチオン性構造がこの移行に重要であることが分かっている。
V.評 価
 細胞内で起こるさまざまな生命現象を温度の視点から詳細に解明するため、高い温度分解能と空間分解能を備えた細胞内温度計測用蛍光プローブを開発することを目的としている。温度変化により蛍光寿命が変化することを利用して細胞の温度を計測するアイディアは独創性が高く、温度分解能0.18〜0.58℃、空間分解能200 nm を達成し、世界で初めて細胞内の温度分布計測に成功しており、温度分解能、空間分解能共に最高水準を達成していることは評価できる。プローブの浸透性の向上、毒性の低減に向けた更なる積み上げを期待し、具体的な応用例を示し、事業化も視野に入れ開発を着実に推進すべきである[A]。


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