資料4

開発課題名「電子顕微鏡のための画像処理サーバの構築をめざした
プラットフォーム開発」

ソフトウェア開発タイプ(調査研究・プラットフォーム開発)

開発実施期間 平成21年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  安永 卓生【九州工業大学大学院 情報工学研究院 教授】
中核機関 :  九州工業大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
電子顕微鏡は撮影画像がデジタル化され、その有益な情報を取り出す際に画像処理が果たす役割は大きいため、個別のソフトウェアのみに頼ることは電子顕微鏡観察技術の普及・発展の妨げとなる。同技術の標準化と普及のキーテクノロジーのひとつは、拡張性の高い共通の画像処理アプリケーション・サービスを提供することである。一方、画像処理アルゴリズムは、個々のアプリケーションに応じてカスタマイズでき、持続的発展が可能な能力の高いシステムが必要である。本課題では、導入が容易であり、かつ、発展性の高い電子顕微鏡に関する画像処理アプリケーションサーバ構築をめざしたプラットフォーム開発の実現可能性調査を行う。
U.事後評価における評価項目
(1)電子顕微鏡ユーザーの観点からの画像処理サーバに関するニーズ調査
 電子顕微鏡ユーザーに対して,画像処理(トモグラフィー、単粒子)のワークショップを電子顕微鏡学会分科会の企画と連動して実施した。これに加え、Web等によるアンケート調査を実施する予定であったが、聞き取り調査によるものに切り替えた。
(2)機器メーカー及びソフトウェア開発業者に対する開発方法の調査
電子顕微鏡の開発メーカー2社に聞き取り調査を実施した。この結果を踏まえ、中核機関が所在する地元の飯塚市のソフトウェア開発を行っているベンチャー企業との打合せを実施。電子顕微鏡に係る画像処理プラットフォームソフトの開発に関して協力の可能性を探った。
(3)技術仕様の策定
ユーザー調査の結果を踏まえ、各種画像処理ソフトウェアの比較検討を行い、個別の機能比較表を作成した。アルゴリズム上の問題はあるが、開発の主流がCUIからGUIに向かっていることがわかった。また、GPGPU*(CUDA*2)等によるソフトウェア(フーリエ変換等)を開発し、速度評価を実施した。GPGPUを用いた並列処理は、電子顕微鏡等の画像処理の高速化に有効であった。これらの評価結果から、ソフトウェア毎の、GUI,CUIの開発状況、ネットワーク関連技術の市場調査を実施した。機器メーカーやユーザーニーズの観点から、プラットフォームとして機能するためには、開発者に対しては低水準API,エキスパートユーザに対しては中間言語(スクリプト言語)APIを提供することが重要であることがわかった。

* General-purpose computing on graphics processing units
*2 Compute Unified Device Architecture
V.評 価
電子顕微鏡技術の標準化、普及を進めるため、異なるメーカー間でも共通して利用可能なプラットフォーム型の画像処理ソフトウェアを開発するため、必要な情報であるユーザーニーズ、電子顕微鏡開発メーカーの考え方、ソフトウェア開発の最先端の動向等を調査し、プラットフォームソフトウェア開発の基盤を整えることを目的とした調査研究である。調査研究は順調に進捗し、プラットフォームに対する要求が、使用者の熟練度に応じて4段階の階層レベルに分類して対応する必要があることが判り、それぞれのレベルごとの詳細な仕様が明確となった。加えてGPGPU等の並列処理技術に関する調査では、GPGPUによるソフトウェアを実際に開発し、画像処理の高速化の可能性を明らかにすると共に今後の研究課題を明確化している点は一定の成果を挙げたと評価される。一方、ユーザーニーズ調査及び機器開発メーカーのヒアリング調査について、報告内容は一般的なレベルに留まっており、聞き取り対象数が少ないことについては、今後もこれらの情報を拡充しつつ、本格的なプラットフォームソフトウェア開発に臨むことを期待したい。


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