資料4

開発課題名「高精度高安定pH計測用イオン液体型参照電極の開発」

プロトタイプ実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成20年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  野村 聡【(株)堀場製作所 開発センター 水質・バイオ開発部 部長】
サブリーダー :  垣内 隆【京都大学大学院 工学研究科 物質・エネルギー化学専攻 教授】
中核機関 :  (株)堀場製作所
参画機関 :  京都大学
秋田大学
日本環境衛生センター
日本ヘルス工業(株)
T.開発の概要
電位測定による溶液分析で最も重要な要素である参照電極について、現在普及しているKCl拡散方式に代わる、本事業「要素技術プログラム」で開発したイオン液体を用いた画期的な参照電極を開発・実用化する。イオン液体の特性、ゲル化、電極構造などの最適化を行い、高精度かつ実用性の高い参照電極を実用化し、環境計測への適用を図る。併せて、従来の参照電極微小化の限界を超え、先端バイオ・ナノテク研究にも適用可能な超微小参照電極の実現を目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)電極の性能
 開発にあたり、生体分野の血清、尿測定には多岐に渡る検討が必要なため、対象を本手法の最もメリットのある環境計測(酸性雨等の低導電率水)に絞り込むという軌道修正を行った。環境計測に係る仕様値に対して、pH標準液での繰り返し再現性、電位安定性、酸・アルカリ耐性、低イオン強度試料での電位変動については目標を達成した。電極寿命については、一部継続中となっている。また、希薄硫酸溶液でのpH値の真の値との差異を0.014〜0.03に低減し、希薄硫酸溶液の他、模擬降水、降水での100回以上の繰り返し測定で性能低下を起こさないことを確認した。
(2)固体化・小型化
 当初予定では、フローセル化、サブミクロンオーダーサイズのゲル化イオン液体コート電極製作とその安定性につき検討を予定していたが、早期に環境計測に特化した製品として上市することを優先し、既存pH電極サイズでの性能確保に注力した。その結果、製品化の目処を得た。
(3)生産技術の確立
本装置を製品化するに当たり、ゲルの膜厚のばらつきを0.1mm以下とし、将来的な大量生産に備え、数十グラム以上のイオン液体の大量合成技術を確立した。また、高品質を保ため、イオン合成の段階で精製を行い、イオン液体の純度を高めた。なお、これらの成果をもとに、本機器は平成23年度下期に発売を予定している。
V.評 価
本事業の要素技術プログラム「高精度高安定pH計測用イオン液体塩橋の開発」における開発成果をもとに、中核機関がもつノウハウ等を併せて測定精度が得にくかった環境計測、特に酸性雨等の低導電率水を計測するpH電極の実用化開発を目的としている。当初の予定では他の計測対象や分野への展開を想定していたが、本方式の製品化を急ぎ早期に市場の反響を得るため、開発項目を絞りスピードアップを図っている。一部未検討の項目があるものの、従来は難度が高かった低緩衝性の環境水において、より真値に近い値をより迅速に測定可能となる意義、イオン液体を計測に適用した先駆的な製品を早期に製品化できたことは高く評価したい。さらに、今後の標準化・公定法に向けた優位性が認められるので、その努力を期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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