資料4

開発課題名「マルチプローブ顕微鏡プローバーシステム」

プロトタイプ実証・実用化タイプ

開発実施期間 平成20年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  長村 俊彦【(株)ユニソク 会長】
サブリーダー :  長谷川 修司【東京大学大学院 理学系研究科 教授】
中核機関 :  (株)ユニソク
参画機関 :  東京大学
豊田工業大学
T.開発の概要
本事業「要素技術プログラム」において開発・発展させてきた超高真空4探針STM(走査トンネル顕微鏡)-SEM(走査電子顕微鏡)装置をさらに高度化し、広く普及させるために、その実証機を試作する。また、本装置で核心的要素となる機能性カーボンナノチューブ(CNT)探針について、その大量生産に適するCNT探針直接成長法を確立し、プラズマCVDカーボンナノチューブ成長装置実証機を試作する。また、探針の「その場」作成装置を超高真空4探針STM-SEMと結合させ、探針の酸化劣化を防いで超伝導特性や強磁性特性を維持した探針による多機能計測を実現し、アプリケーション計測の多様化を図る。
U.事後評価における評価項目
(1)マルチプローブ顕微鏡の実証機開発
 STM機能に加え、AFM(原子間力顕微鏡)機能、FIB(集束イオンビーム)機能を組み込んだ実証機を開発した。低温性能では世界最低温度の2.5Kを達成し、液体ヘリウム消費量も1/2に低減させた。また、SEM走査はプローブ制御と一体化させてプローブの位置決めを容易にし、計測ソフトの統合により操作性を改善した。完成したプロトタイプ機を東京大学において応用開発に利用し、成果を論文発表等で公開している。
(2)多機能プローブの開発と量産化
 要素技術プログラムで開発したピエゾ抵抗カンチレバーについては、製品化を行い、量産化の技術を確立させた。また、ニッケルや白金等の金属プローブ開発では、電解研磨法による複数のプローブを同時加工できる装置を完成し、評価試験を行うとともに、試験販売を実施した。さらに、CNT付きプローブの開発では、化学気相成長法により、ニッケル探針の先端にCNTを成長させる方法を見出し、CNT付きプローブの実用化・製品化の見通しを立てた。これら多機能プローブのうち、STM用のニッケルプローブ、CNT付き金属プローブはユーザー評価を行うとともに、試験販売を開始した。
(3)その他
開発してきたプローブ等は学会併設展示会等の機会にユーザーに宣伝し、国内での販売、ユーザー評価に供している。今後、販売体制の強化を図り、海外への展開を進めていく予定である。
V.評 価
本事業「要素技術プログラム」で得られた成果(4探針STMの制御系および多機能ナノチューブ探針の開発)をもとに、装置及び探針の実用化・量産化を図ることを目的とした実用化開発である。当初計画では、観察室に組み込むこととしていたFIBを別置きにする等の変更はあったが、開発は順調に進捗し、ほぼ全ての目標を達成するともに、一部のプローブ等は製品として販売を開始している点は評価に値する。今後は、プローブの自動制御など、さらなる製品のブラッシュアップを進めることで、本事業の優れた成果が国内外で多くの研究者に利用され、最先端の研究成果を生み出していくことを強く期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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