資料4

開発課題名「光周波数標準用超高品質光キャビティーの開発」

要素技術タイプ

開発実施期間 平成20年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  櫛引 淳一【東北大学大学院工学研究科 教授】
中核機関 :  東北大学
参画機関 :  (独)情報通信研究機構
日本航空電子工業(株)
T.開発の概要
次世代光周波数標準を実現するため、その要素技術の一つである超高品質光キャビティーの開発を行う。超音波マイクロスペクトロスコピー技術による線膨張係数(CTE)評価法を用いて、CTE分布が±5ppb/K以内、ゼロCTE温度が20〜25℃となる超低膨張ガラスキャビティー材料を開発する。また、超低損失・高反射率多層膜ミラーを開発する。これらを組み合わせ、フィネスが100万以上の共振器を実現する。
U.事後評価における評価項目
(1)超音波マイクロスペクトロスコピー(UMS)技術を用いた超均質超低膨張ガラスの作製
 インゴット内分布が±5ppb/K以内となる、脈理がほとんど見られないTiO2−SiO2超低膨張ガラスインゴットの作製に成功した。作製したインゴットを評価し、その結果を踏まえて使用する部材の選別を行った。ガラスの熱処理条件によりゼロCTE温度を室温付近で変えることが可能であることを明らかにした。これらから、ゼロCTE温度が23.2℃及び24.7℃となるガラスインゴットの作製に成功した。
(2)超高フィネス光キャビティーの作製
スーパーポリッシュ技術を最適化し、0.1nmRMS(Root Mean Square)以下の表面粗さを達成し、散乱損失を1〜2nmオーダーに抑えることができた。また、超高反射率多層膜ミラーの成膜条件を最適化することで、波長729nmにおける反射率99.9992%、波長1,062nmで反射率99.9997%を達成した。得られた基板とミラーを組合せ、波長729nmでフィネス400,000、波長1,064nmでフィネス1,034,000を得た。
(3)超高フィネス光キャビティーの光周波数標準器への実装・評価
  開発したフィネス計測系を用い、実際に超高反射率ミラーと超低膨張(ULE)ガラススペーサーで構成された光キャビティーのフィネス計測を行い、反射率を要求精度である6桁で決定することに成功した。参画機関の情報通信研究機構の高精度絶対周波数計測技術を活用し、ULEガラスのゼロCTE温度を測定したところ、東北大学で得られた結果とよく一致した。
V.評 価
次世代の光周波数標準を実現するために、熱膨張率が室温付近でゼロになるガラス材料を開発して高品質光キャビティーを作製することを目的とした要素技術開発である。熱膨張率がゼロになるガラス材料の組成と熱処理温度制御の関係を明確にし、光キャビティー材料の作製技術の開発に成功している。また、反射率が高いミラーを作製し、キャビティーのフィネスが106を超える結果を得ている。光周波数標準器への実装までには至らなかったが、要素技術としての目的は達成されている。今後は達成された高性能を活かし、米国ベンチャー企業が実質的に独占している光キャビティー市場に参入すべく、さらに技術を磨き上げ、早期に開発成果が市場に投入されることを強く期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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