資料4

開発課題名「複雑系の計測評価技術―ニオイの計測―に関する調査研究」

機器開発タイプ(調査研究)

開発実施期間 平成21年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  木内 正人【(独)産業技術総合研究所 ナノテクノロジー研究部門 主任研究員】
中核機関 :  (独)産業技術総合研究所
参画機関 :  関西大学
奈良女子大学
住友金属テクノロジー(株)
T.開発の概要
ニオイは、人の生活の安全を脅かす情報を含んでいる場合があり、人が集まる場所でニオイを分析することは、安全・安心な社会の実現にとって重要である。本調査研究では、特に微生物の代謝により放散する揮発性有機物質(MVOC)の検出に焦点を当て、簡便で安価なMVOC分析装置開発を目指した調査研究を行う。MVOCの検出が、感染症の予防や微生物腐食の防止などに有用であることを示し、装置開発の可能性を探る。
U.事後評価における評価項目
(1)ニオイ測定対象の実態把握
 生活環境におけるニオイの問題、ニオイの測定手法、ニオイと疾病との関係等について 専門家を招聘した定期的な研究会を開催し、有用な最新情報を収集した。 また、天理市の老人保健施設にて ニオイ成分の検出を試みるが、消臭化、空調の向上等による影響か 検出できなかった。ウズラ生産農場では、フラン類等の臭気物質を検出した。
(2)対象となるニオイ検出への質量分析法の適用可能性の判定
 表面支援レーザー脱離イオン化質量分析(SALDI-MS)により、残留性有機汚染物質であるPFOAの検出が可能であることを確認した。また、表面支援レーザー脱離イオン化(GS-SALDI)、大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化(AP-MALDI)、大気圧低温プラズマイオン化(LTP)の3種のイオン化法について検討し、全てのニオイ成分をイオン化する方法は無く、ニオイ成分の特性を考慮して検出方法を選択する必要があることを明らかにした。
(3)開発すべき測定システムの提案
 今回の調査・検討結果を踏まえ、開発すべき測定システムとして「ニオイ成分を10,000倍以上に濃縮できる、小型軽量の濃縮装置、および可搬型でハイブリッド自動車の電源で動作する小型質量分析装置」を提案し、開発までのロードマップも示した。
V.評 価
可搬型の簡便なニオイ成分の分析装置を開発する為の事前調査・検討を行うことを目的とした調査研究である。人が集まる場所でのニオイ成分には、人の安全を脅かす情報を含んでいる可能性があるので、その分析を実施することで 人の生活の安全・安心に寄与できる。調査研究では、ニオイ成分に関する専門家を招いた研究会を立ち上げ 最新の情報収集に努め、且つ、老人保健施設等のニオイ成分検出調査等を実施して「開発すべき装置」のコンセプトを確立し、装置開発までのロードマップも策定した。しかし、複雑なニオイ成分に対応した分析技術に関しては今後、継続検討が必要である。病院や高齢者施設等での検証を経て評価すべきニオイ成分を選定し、高感度な検出方法を確立して、可搬型の簡便なニオイ成分検出装置を開発されることを期待したい。


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