資料4

開発課題名「万能ヒドロゲル化学センサーアレイ開発のための調査研究」

要素技術タイプ(調査研究)

開発実施期間 平成21年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  早下 隆士【上智大学 理工学部物質生命理工学科 教授】
中核機関 :  上智大学
参画機関 :  (独)産業技術総合研究所
T.開発の概要
個々の独立したヒドロゲルの中で高度な分子認識反応を実現できれば、さまざまな水溶液検体の網羅的解析が可能なヒドロゲル型化学センサーアレイの開発が可能となる。本調査研究ではヒドロゲル内にシクロデキストリンからなる疎水性のナノ空間を導入し、水に不溶のさまざまな分子認識プローブを包接させ、分子認識プローブ/シクロデキストリン複合体の超分子形成に基づく動的分子認識機能をヒドロゲル内で発現できる万能ヒドロゲル化学センサーアレイ開発のための調査研究を行う。
U.事後評価における評価項目
(1)CDヒドロゲル合成条件調査
 各種形状、架橋度のシクロデキストリン(CD)ヒドロゲル合成条件の調査を行い、様々な形態のCDゲルを作製する。
(2)動的分子認識機能の解析と評価に関する調査研究
様々な形態のCDゲルを作製し、CDゲル内での各種プローブの動的分子認識機構を明らかにする。
(3)ヒドロゲルの薄膜化・基盤固定化に関する調査研究
ガラスあるいはシリコン基板上へのヒドロゲルの固定化および分子認識プローブや蛍光マーカ分子の導入法を確立する。
(4)分子認識反応の高感度検出・アレイ化
分子認識プローブによる分子認識反応の高感度検出探索、アレイ化を行う。

本調査を通して、次のような知見を得ることができた。 ICP-MSなどの大型機器に頼る必要のないオンサイト(その場)で高度な診断機能を有する化学計測技術開発に対するニーズは極めて高い。調査研究を行っている「万能ヒドロゲル化学センサーアレイ」は、オンサイト化学計測システムを実現するための要素技術として有望である。
ターゲットとして
1)様々なイオン・分子に応答する超分子プローブの組み合わせ
2)応答のパターン解析による水質診断、ストレス診断、病気診断
3)高性能オンサイト化学計測システム
があげられる。また社会的ニーズとして
4)発展途上国で深刻な問題となっている鉛やヒ素など有害元素の検出
5)硬度、COD(化学的酸素要求量)、汚染評価など水質診断に関わる水ビジネスの拡大
6)汗、唾液、尿中のストレスマーカー検出、病気診断
が狙える。
V.評 価
CDの包摂機能を充分生かした蛍光検出を固定基板上でキット化する要素技術の実現性を実証した点。また、CDの固定方法や、PHなどの測定環境に敏感であり対象物質への反応選択性が高いことも把握できたこと、バイオや医療などの特定の応用分野で、選択的な効果をもつセンサー開発への指針となるものと評価できる。 本調査研究の結果を実効性あるものにするためには、具体的な物質を特定して、その測定環境の制御手法や競合システムへの優位性などを充分把握したうえで、センサーの研究開発を行うことを期待したい。


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