資料4

開発課題名「ICP-MSとレーザを融合させた極微量同位体分析装置の開発」

要素技術タイプ

開発実施期間 平成20年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  長谷川 秀一【東京大学大学院 工学系研究科 准教授】
中核機関 :  東京大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
広く分析に利用されている誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)をイオン源とし、分析したいイオンを選択的にレーザ冷却することでトラップする技術の開発を目指す。特に極微量の同位体を検出することを可能にし、全く新しい分析手法の確立を目指す。
U.事後評価における評価項目
(1)ICP-MSで生じた43Ca+を選択的にレーザ冷却し、蛍光によって検出する
 43Ca+のレーザ冷却に必要なレーザシステムの構築を行い、レーザ光加熱冷却のみで捕獲イオンを43Ca+に純化し、超微細構造が分解されたスペクトルを取得した。さらに既製品のICP-MSにイオントラップを接続して、引き出したイオンを観測することに成功した。これらを用いて、43Ca+を選択的に冷却・観測することに成功した。イオントラップ部分の電圧最適化、検出効率向上等によって、単一イオン観測が可能となることが期待される。
(2)安定同位対比が最小の46Ca+を用い、開発システムを実験的に評価する
安定同位体比で最も微量な天然存在比0.004%の46Ca+の検出に成功した。偶数同位体で比率が最も近い48Ca+も同条件で測定して46Ca+と比較し、同位体比を算出した。測定比は天然存在比とおおよそ一致したが、同位体ごとの測定依存性についてさらに検討が必要であることがわかった。実験結果を踏まえ、効率向上のための検討事項を整理した。
(3)41Ca+に関する同位体シフトを考慮するための分光実験
  41Ca+の分光データが全く存在していないことから、レーザ冷却に必要なレーザ波長を既存のデータと理論的考察より導出した。同位体選別的イオン化について、48Caと44Caに着目して検討した。その結果を踏まえて41Caの選択的イオン化について検討した結果、入手可能な濃縮サンプルから41Ca+を観測するためには、装置の分解能と効率のさらなる向上が必要であることがわかった。
V.評 価
本課題は、同位体選択的なレーザ冷却法と質量分析法を組み合わせることによって、極微量の同位体を観測可能とする要素技術の開発を目指したものである。レーザ冷却法については順調に開発が進んだ。しかし、試料水溶液をプラズマイオン化する際に、観測対象イオンの同重体が生成する問題の対応に時間を要した。反応系に酸素を導入することで同重体CaH+を低減できることを定量的に示した。本成果により、全てのカルシウムの安定同位体の同位体比が測定可能となった。特に43Ca+の超微細構造を得たことは評価に値する。今後はさらに詳細なデータを積み重ね、分解能と検出効率の向上を行い、本成果の早期実用化に期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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