資料4

開発課題名「超高密度ハードディスク実現のためのナノ潤滑計測技術」

要素技術タイプ

開発実施期間 平成19年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  福澤 健二【名古屋大学大学院工学研究科 教授】
中核機関 :  名古屋大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
高度情報化社会の中核的情報記憶装置であるハードディスクのヘッド・ディスク技術には技術的パラダイムシフトが求められている。すなわち、従来の空気浮上型潤滑から接触許容型潤滑への転換が次世代装置の実現には必須である。しかし、ヘッド・ディスク間のナノ摺動すき間の現象を従来の計測技術では定量化困難であることが大きな障害となっている。本開発では、ハードディスクの超高密度化を実現する革新的な計測技術を確立する。
U.事後評価における評価項目
(1)接触点の検出および水平力/鉛直力の測定
 当初は間欠接触方式による計測を企図したが、中間評価での指摘を踏まえ、常時接触方式へ計測方法を変更した。常時接触方式では高速摺動時に,非同期成分検出法により接触点検出精度約0.2nmを達成した。水平力測定では、摺動速度0.1m/sオーダーで厚さ1nmオーダーの潤滑膜の水平力測定に成功した。また、水平力測定用プローブの固定法を工夫し、高速摺動においてすきま変動を約0.1nmに抑制したプローブ一体型鉛直力センサーの開発に成功し、厚さ4.7nmの潤滑膜について低速(0.1mm/sオーダー)の水平・鉛直力同時測定に成功した。
(2)膜分布観測
新たに考案した2段結像系により視野狭窄化の課題を解決し、画像取得速度10枚/秒の膜分布の動的観測に成功した。またストロボ撮像法により間欠接触方式の摺動直後の膜像の取得に成功した。加えて照明系、結像系の改良により膜厚分解能は0.5nmを達成した。
(3)その他
  測定方法の統合については、プローブ一体型鉛直力センサーの実現により達成できた。水平力測定と膜分布観測の統合については、同時測定の原理確認に成功した。測定環境の制御(温度制御・清浄環境)を行うため、ペルチェ素子を用いた温度制御可能な試料台を開発した。湿度と清浄度の制御は装置全体の構成が決定した後に検討を行うこととした。
V.評 価
次世代のHDDのヘッドとディスク間のナノ摺動すき間の高速潤滑現象を計測することを目的とした要素技術の開発である。中間評価の指摘を踏まえて、常時接触方式での開発に絞り未達成の課題であるサブナノギャップの高速潤滑特性解明に向け、部材の動特性の緻密な精査とシステム検証を重ねて実データの取得に成功した。従来の装置では困難であった剪断速度106(1/s)以上の領域まで計測を可能とし、ハードディスクが高速摺動する領域109(1/s)での粘性測定に近づき、定量的な取り扱いが難しいハードディスク表面とヘッド間のトライボロジーに対して、一つの指標を与える計測技術を開発した。また、この成果はハードディスクの潤滑性能向上ばかりでなく、ものづくり現場の未解明の実現象やエネルギーの効率的活用や、ナノ界面の物質挙動の解明に広く役立つ測定技術への展開が期待できる。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る成果が得られたと評価する[S]。


前のページに戻る