資料4

開発課題名「SOI技術による時間・空間X線イメージセンサー」

要素技術タイプ

開発実施期間 平成19年10月〜平成23年3月

チームリーダー :  新井 康夫【高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 教授】
中核機関 :  高エネルギー加速器研究機構
参画機関 :  なし
T.開発の概要
従来、放射線検出用SiとLSI用Siは特性が異なることから、一体化させることが難しかったが、貼り合わせSOI(Silicon - On - Insulator)の登場により一体化が可能となった。本課題では、SOI下部Siにp-n接合センサーを形成し、上部CMOS回路と接続することにより、高分解能の2次元X線イメージセンサー(〜50μm角/pixel、256×256画素程度)を開発する。一体化により高感度、高速処理、低価格化が期待できると共に、各ピクセルに計数回路を持たせる事により、反応の計数/時間測定/エネルギー測定を同時に行えると共に、計数回路をメモリーとして使用する事で超高レートの測定にも使用できる。
U.事後評価における評価項目
(1)センサー部の開発
 FZ(Floating Zone型)-SOIウエハの実現により、抵抗率〜10k・Ohm・cmが達成できた。また、厚い空乏層が可能となったため、Siウエハは、厚さ500μmまで使用可能となった、最大印加電圧は200〜400V、空乏層厚は500μmを達成し、当初目標を遙かに超える性能を達成した。
(2)ピクセル部の開発・読み出し回路の開発
 ピクセルサイズは積分型で17μm角、計数型で64μm角を実現し、ピクセル数は積分型で512×832(42.6万画素)、計数型で212×72(1.5万画素)を実現した、ピクセル回路については5.9keVのX線に対し、S/Nが約3でのフォトンカウントを実施し、0℃まで冷却するとS/Nを10まで得られる見通しを得た、計数回路については18ビット長のものを設計し、計数速度は250MHzが得られた。時間分解能及びピクセル間データ転送速度の直接測定は実施できなかったが、達成の見通しを得た。読み出し速度については6.25MHzまで確認した。波形計算から、40MHzまでは可能と推測している。
(3)X線源による照射試験
 チップの大きさは積分型で10.2mm×15.4mm、計数型で5.0×15.4mmを実現した。プログラマブルピクセル構成はチップ製作を実施したが、未確認である。センサー厚を厚くしたことから感度が向上し、5keVX線に対して検出効率はほぼ100%、3〜20keVでは40%以上の値を得た。
V.評 価
半導体のウエハを2枚絶縁体で挟み、接合したSOIを用い、片側にはX線センサー、反対側に読み出し回路LSIを構築し、通常の配線を廃したセンサーの開発である。開発は順調に進捗し、FZウエハの開発に成功したことに起因して、エネルギー蓄積・分解が可能なX線イメージング用として優れたデバイスを完成させた。知的財産権の取得も順調に進んでおり、早期の実用化が見込める。今後、計測分析機器メーカーの協力を得て本開発成果が製品化されることを期待したい。本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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