資料4

開発課題名「ガス電子増殖による新型光検出器の開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 門叶 冬樹【山形大学理学部 准教授】
中核機関 : 山形大学
参画機関 :  首都大学東京
浜松ホトニクス(株)
T.開発の概要
 古くて新しい放射線検出器の1つであるガス検出器と、紫外から可視光波長領域に高い感度を持つ光電変換膜とを複合化させた「ガス増倍型光検出器」を開発する。従来の光センサーである光電子増倍管や半導体受光素子と比較して、広い有効面積、高い感度特性と均一性とを兼ね備え、かつ高磁場環境下においても動作可能な新しい高感度光センサーを開発し、学術研究のみならず幅広い分野での産業利用につなげることを目指す。
U.中間評価における評価項目
(1)細孔型MPGDの開発・評価
 細孔型MPGDの開発において、限要素法電場解析ソフトMaxwell-3Dとガス検出器のシミュレーションコード(Garfield)を用いて細孔型マイクロパターンガス検出器(MPGD)の細孔の形状、厚み、サイズ、ピッチの最適化をシミュレーションにより行った。電子増殖度104以上、細孔内で増殖された電子群が次段のMPGDへ転送される割合で定義される電子転送効率25%以上を達成することができた。
(2)メッシュ型MPGDの開発・評価
 メッシュ型MPGDの開発において、有限要素法電場解析ソフトMaxwell-3Dとガス検出器のシミュレーションコード(Garfield)を用いて。メッシュの線幅、メッシュ間隔、そして陽極とメッシュの間隔をパラメータとしてシミュレーションにより設計を進めた。陽極とメッシュの間隔200μmのメッシュ型MPGDにおいて電子増幅度103を得ることができた。
(3)『ガス増倍型光検出器』の試作
 ガラス基板に金属を電極として蒸着し、マスクを通してマイクロブラスト加工を両面に施して細孔を設ける方法で、新型の細孔型MPGDを製作する技術を確立した。光電面の感度特性試験から、ルーメン感度20.1μA/lmを達成することができた。光電面を形成する材料であるアルカリ金属との反応性が低い金属、絶縁体材料のみで形成できるメッシュ型MPGD構造として、金属メッシュ陰極、縁体支柱、陽極プレートとで形成されるメッシュ型MPGDを製作する手法を確立した。光電面の感度特性試験から、ルーメン感度27.3μA/lmを達成することができた。
V.評 価
 ガス検出器に光電変換膜を複合化させた新たな検出器の開発を目標としている。開発は順調に進捗しており、既にメッシュ型MPGDの試作器を作製し、感度特性評価実験も行われている。本開発においては、参画機関である浜松ホトニクス社の果たしている役割が大きく、特に光電面他素子部の設計に関しては同社が有する豊富な実績と経験が効果的に働き、実用化への見通しが立ちつつある。しかし、実際の開発現場で利用する検出器とするためには、素子のさらなる大型化、高空間分解能達成について、より高い数値目標を設定し、この最終目標を視野に入れた要素技術開発を実施するべきある。今後、本課題の開発期間中に可能な限り実用化に向けた努力を重ねつつ、効果的・効率的に開発を推進すべきである[B]。


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