資料4

開発課題名「臓器内部硬さ分布計測用MRE加振装置の開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 但野 茂【北海道大学大学院工学研究院 教授】
中核機関 : 北海道大学
参画機関 :  北海道大学(理)
千葉大学
T.開発の概要
 磁気共鳴画像装置(MRI)を用いて体内の硬さ分布を計測する磁気共鳴弾性率測定法(MRE)のため、MRI装置内に体表面から臓器内部を効果的により深層の組織まで振動伝達が可能な加振装置を開発する。また、臓器を粘弾性体とした計測の数理的原理を構築し、測定の高精度化を図り、実用的な臨床機開発およびその制御・処理方法を開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)MRI顕微鏡導入
 マイクロMRIに加振機を搭載し、MR分解能:1.2mm以下(128×256pixel撮影時)のMRE実験を開始した。尚、マイクロMRI専用実験室を作り、低ノイズ・静音・室温制御環境を実現した。 
(2)縦波加振機の開発
 Barによる振動伝達機構を搭載した動電型加振機(一号機)を製作した。振幅の入出力を加速度計により計測し、必要な加振性能が実現されていることを確認した。 (出力/入力比:100%以上、振幅:0.5mmを達成、安定加振度:誤差±5%以下)
(3)傾斜磁場制御技術
 磁場制御に必要なパルスシーケンスのフローチャートを作成し、MRE用撮影シーケンスを開発した。MRIのMSG制御信号と関数発生器を同期させることで、鮮明なMRE画像の取得に成功した。
(4)MRE数理解析モデル開発
 粘弾性を考慮した解析モデルをMRE逆解析プログラムに組込んだ。ノイズを多く含むMRE実データに対する既存のデータ解析手法を改良し、ロバスト性を向上させた。本解析手法において、データに10%の相対誤差を仮定した場合でも理論再構成精度は85%以上を維持していた。
(5)生体組織の硬さ測定
 生体軟組織の硬さ測定装置を開発し、ブタ肝臓やブタ大腿筋の生体軟組織の硬さ測定を行った。本装置による同一試験片の弾性率測定では約95%の測定再現性を示した。
(6)生体組織力学応答試験用ゲルの作製
 擬似生体ファントムゲルとして要求される物性となるゲルの合成条件(硬さ特性の再現性:100%(生体肝臓の貯蔵弾性率の範囲(10〜20kPa:文献値)内に収まった)を見出した。弾性率が低い割には強度の高いPAAmゲルであり、ヒト肝臓の貯蔵剛性率10〜20kPaに対し、12kPaのファントムの生成に成功した。マイクロMRE実験のファントム用大型ゲル(60×50×95mm)を作製した。
V.評 価
 人体を想定した0.5mmの大きな変位を誘起する加振装置とMRIの組合せで、0°90°の位相画像取得に至るシステム要素を中間評価時点で達成したことは評価できる。今後は、人体ゲル試料での測定を積み上げつつ、並行して人体の触診の代替機能としてどの程度の効果が期待できるかの検証および実用化に向けた課題抽出を、臨床医との連携を深めるなど、本技術を実際に活用する現場を想定して開発を推進し、知的財産の取得もする必要がある。このためには、開発期間内に、システムメーカー、医療現場をチーム化する活動を起こして、本事業「機器開発プログラム」等へのステップアップを目指した開発も視野に入れつつ、着実に開発を推進するべきである[A]。


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