資料4

開発課題名「ウイルス感染感受性およびワクチン接種必要性診断技術の開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 木戸 博【徳島大学疾患酵素学研究センター 教授】
中核機関 : 徳島大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
 感染予防対策において、社会を感染から守るには感染リスクの高い人を予め診断して優先的にワクチン接種する必要がある。ウイルスが最初に感染する鼻腔や気道の抗ウイルスIgA抗体量が、個人の感染感受性を判定する最も良い指標であることをコホート研究から初めて明らかにした。本開発では、鼻汁と血液の極微量検体で感染リスクを迅速に診断し、ワクチン接種の必要度を診断するハイスループット抗原アレイを開発する。
U.中間評価における評価項目
(1)各種インフルエンザウィルス抗原の調製
 最近10年間の流行株7種類について、スプリットワクチン抗原のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)チップ搭載条件を確立し、数値目標を達成した。
(2)DLCチップへの抗原搭載条件の最適化
 DLCチップ1スポット当たり、HA抗原33fmolが検出に適した最高搭載密度であることを決定できた。さらに、非特異的反応を抑制することで 555nmの緑色蛍光でS/N比65を実現し、数値目標を上回った。また、自家蛍光が殆ど検出されない655nmの赤色蛍光によりS/N比140を達成し、次世代型の機器開発の可能性も見えた。
(3)抗インフルエンザ抗体の検出時間の短縮化
 抗原抗体反応時間は、全体で120分であり数値目標をクリアした。反応時間としては未だ十分に速くはないが、今後のチップ表面反応速度や自動化等の検討で短縮が可能と思われる。 また、自動解析ソフトを開発し 抗原抗体反応後スポットの抗体結合量を20分以内/検体で測定でき、データ処理時間の数値目標を達成した。
(4)感染リスク評価基準の作成
 インフルエンザ感染リスク評価基準作成の為の鼻汁・血液検体は、2009/2010年のインフルエンザ流行により、目標を大きく上回る2,155検体を収集できた。
V.評 価
 インフルエンザ感染リスクが鼻汁中IgA濃度で定量できる という発見に基づいた、ウイルス感染感受性とワクチン接種必要性診断を目指した技術開発である。開発は順調に進んでおり、ウイルス抗原の調製、DLCチップ搭載条件の最適化、ウイルス抗体検出時間の短縮化、感染リスク評価基準の作成と、全ての項目で数値目標を達成している。今後は、反応時間の高速化を図り、感染リスク評価基準を完成し、本事業の「機器開発プログラム」等へのステップアップを考慮に入れ、本技術の成果を早期に実現・実用化していくために開発を積極的に推進すべきである[S]。


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