資料4

開発課題名「迅速高感度な新規蛋白質相互作用検出系の開発」

(平成21年度採択:要素技術プログラム【一般領域】)

チームリーダー : 上田 宏【東京大学大学院工学系研究科 准教授】
中核機関 : 東京大学
参画機関 :  (なし)
T.開発の概要
 蛋白質間相互作用検出系は、創薬・診断など幅広いライフサイエンス分野で応用可能な重要な計測技術である。本開発では、これまで不可能であった高感度な生物発光に基づく試験管内蛋白質相互作用検出系の実現を目指す。ホタルルシフェラーゼの変異体を巧みに組み合わせて、従来法に比べ、飛躍的に高速・高感度に蛋白質の相互作用を検出する要素技術を開発する。蛋白質、核酸、低分子など殆どすべての分子の相互作用を効率よく検出することが可能となる。
U.中間評価における評価項目
(1)測定感度とS/N比の向上のためのFluc変異体ペアの最適化
 免疫抑制剤ラパマイシン結合ドメインFKBP12とFRBの溶液中でのラパマイシン依存的な会合を反応開始1秒程度で検出できた。FKBP12−ラパマイシン複合体とFRBの解離定数がおよそ12nMであることから、検出下限1nMが妥当な値であることを示した。また、S/N比については、同様の系で25pmol同士の相互作用の有無では、最大4.8倍の発光強度比、1pmol同士の相互作用の有無では2倍以上の発光強度比となった。双方とも反応開始1秒後に得られた値であり、今後、バックグラウンド発光の原因であるK529変異体を改良することでバックグラウンドを低減することが可能である。
(2)細胞内外での相互作用の検出
 細胞外においては、抗リゾチーム抗体を用いたオープンサンドイッチモデル系において、試験管内で0.7pmolのリゾチームを検出できた。目標としていた抗リン酸化ビメンチン抗体の大腸菌での発現が思わしくなく、抗ニワトリ卵白リゾチーム抗体で代替した。細胞内については、精製プローブを生細胞内へ導入する条件の検討に時間を要することなどから、上記のラパマイシン検出系をCOS-7細胞で発現させ、最大2倍以上の発光強度比を得た。
V.評 価
 チームリーダーの考案した独創的な高感度生物発光を利用して、細胞内および細胞外の蛋白質間相互作用を検出することを目的とした要素技術の開発である。開発目標としている測定感度、S/N比については概ね達成できている。細胞外の相互作用測定については開発が軌道に乗りつつあり、細胞内での検出に関しても原理的な証明はなされたが、プローブの導入法等技術的困難もある。本技術の実用化を考慮した場合、細胞外の相互作用検出に特化した上で、パートナー企業を募り、方向性を絞って早期の実用化を目指して、開発を着実に推進するべきである[A]。


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