資料4

開発課題名「光回折技術を用いた機能性微粒子の実時間識別システムの開発」

(平成21年度採択:機器開発プログラム(領域非特定型))

チームリーダー : 鵜野 克宏【茨城大学工学部 メディア通信工学科 准教授】
中核機関 : 茨城大学
参画機関 :  (有)高度技術研究所
T.開発の概要
 近年、医学、生物学などにおいて、ミクロンからサブミクロンサイズの粒子群を大視野で測定・観察するための技術開発が緊急に必要とされている。本開発では、さまざまな形状や大きさの要素が混在している複合材料から特定の形状のみの分布情報を抽出する方法として有効なマッチトフィルターに光学的座標変換処理機能を付加し、既存装置よりはるかに高い識別能力を有する高速でフレキシブルな計測システムの実現を目指す。これにより、リポソームなどの生体機能微粒子形状の識別、および運動追跡の実時間処理の実現が期待される。 
U.中間評価における評価項目
(1)光学的座標変換多重マッチトフィルター光学系の作製
 基本設計図を完成させ、光学系を構築して外装を作製した。目標値は、用いたLCOS(Liquid Crystal on Silicon)の空間分解能8μm、表示画像サイズ1.5cm×0.8cmに対して、より高精度の空間分解能と、適切な表示面積を達成した。フレネルレンズおよび対数極座標変換フィルタの縞間隔を同程度とし、入力画像がこれに対して数百倍の大きさで光学的座標変換画像を取得できた。外装は光学エンジンを使用したことで目標値より小型軽量化できていないが、今後、改良による縮小小型化を目指している。
(2)画像処理・転送・表示ユニットの作製
 画像処理ソフトウェアの基本設計を完了した。画像処理速度は10fpsの目標値に対して、4MピクセルのCMOSカメラを導入することで、3倍の画像転送速度を実現することができた。画像処理装置のサイズは重量が15kgと目標値より重くなったが、LCOS表示装置、制御回路、画像処理装置、CMOSカメラ、CCDカメラから構成される光学系を完成した。
(3)目標に掲げていなかった成果
 アナログ・デジタルのハイブリッドにより高速・並列画像処理が可能となり、本開発装置による計測対象が微粒子以外の一般画像にも拡大された。
V.評 価
 反射型の光空間変調器であるLCOSに参照粒子群のバイナリーホログラムを表示させることで、様々な形状の微粒子識別にリアルタイムで対応できる計測装置を目指した開発である。開発は順調に進捗し、光学系、画像処理機能の双方について数値目標を概ね達成している。しかし、目標値は既成の部品の組合せにより達成可能な数値であり、これらを統合した本装置の性能については不確定である。特に、本装置により測定しようとするリポソームや高分子ミセル等への適用に対して、現行の分解能では不十分であり、現時点では既成の光散乱法による装置を置き換えるには至っていない。今後は、実サンプルによるデータ取得を踏まえ、装置の改良・高性能化を進めることを期待したい。これらを踏まえ、本課題は今後、効率的・効果的に開発を推進すべきである[B]。


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