資料4

開発課題名「表面プラズモン共鳴−表面プラズモン励起蛍光複合装置の開発」

(平成21年度採択:機器開発プログラム【一般領域】進化工学・分子デザイン手法等高機能バイオセンサー・デバイスを備えた計測分析)

チームリーダー : 岩田 博夫【京都大学再生医科学研究所 教授】
中核機関 : 京都大学
参画機関 :  アークレイ(株)
京都工芸繊維大学
T.開発の概要
 創薬や医療などに活用できる高感度分子間相互作用計測機器の開発を目指す。表面プラズモン共鳴−表面プラズモン励起蛍光の原理および進化工学手法を用い、ハイスループット解析用高感度機器およびそれを利用した抗体医薬候補物質スクリーニング法の開発、ならびにポイントオブケア臨床検査用高感度小型機器の開発を行う。
U.中間評価における評価項目
(1)ハイスループット解析用SPR−SPFS複合機の開発
 複合機の基本設計図を完成させ、計画を前倒ししてプロトタイプ機を完成させた。プロトタイプ機では、観察視野1.4×1.1cmと目標値より14%程度小さくなったが、水平方向の解像度は高く、100μmとなった。この装置で4,125スポット(75×55)と目標の42倍のハイスループット解析性能の可能性を示した。
(2)SPR−SPFS複合機に導入するヒト抗体ライブラリチップの開発
診断用非免疫ヒト抗体ライブラリと診断用非免疫マウス抗体ライブラリ、モデル実験用AFP(肝癌マーカーαフェトプロテイン)マウス抗体ライブラリを構築した。In Vitro Domain Shufflingにより、H鎖、L鎖を掛け合わせることで、1010以上の多様性を創出できた。また、スクリーニング性能については、モデル抗原(AFP)に特異的に作用する抗体をライブラリから多数獲得でき、解離定数が0.1nM(H/L混合時)の抗体を獲得した。
(3)ポイントオブケア臨床検査用小型SPR−SPFS装置の開発
 検出感度(10-12以下)、反応開始から検出までの時間を20分以内とする目標についてはいずれも達成した。今後、感度については、金薄膜と蛍光分子の間への絶縁層の形成、光学フィルターの変更、抗体の配向固定などの改良によりさらに向上可能である。反応開始から検出に要する時間については、低濃度域での測定の再現性を向上させ、スロープ法に変更することで、数分間に短縮できる可能性がある。
V.評 価
 抗原抗体反応を近接場光により検出する臨床用医療機器を目指した、汎用的なイムノアッセイ機器の開発が本課題の目標である。開発は順調に進捗しており、抗体ライブラリ、光学系、流路等の個別要素技術につき、着実に目標を達成している。本課題の最終目標は本機器の臨床分野での実用化であり、開発成果を早期に社会還元することが重要であると考えられる。よって今後、臨床応用に向けて、まず、対象とする抗体を絞込み、測定現場での使用に耐える構造の強化など装置の開発に特化し、計画を1年前倒しして、開発を着実に進めるべきである[A]。


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