資料4

開発課題名「超高効率なタンパク質スクリーニング技術の開発」

開発実施期間 平成20年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  柳川 弘志【慶應義塾大学 理工学部 教授】
中核機関 :  慶應義塾大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
 日本発の独自技術であるIn vitro virus法とマイクロ流体チップの技術を組み合わせることにより、従来よりも、はるかに高効率なタンパク質スクリーニングの要素技術を確立する。これにより、将来的には、マイクロ流体チップを搭載した非常に簡便かつ安価な装置で、タンパク質相互作用の大規模な解析や、有用な抗体医薬・ペプチド医薬・人工タンパク質などのスクリーニングを、簡便かつ低コストで実現可能とする。
U.事後評価における評価項目
(1)Biacoreセンサーチップを利用したIVVスクリーニング効率の最適化
 In vitro virus(IVV)法を用いて標的分子を結合させたBiacoreセンサーチップを利用してIVVスクリーニング効率の最適化実験を行った結果、一本鎖抗体-抗原タンパク質相互作用、タンパク質-DNA相互作用、タンパク質-低分子化合物相互作用、タンパク質-ペプチド相互作用などの組み合わせで高い濃縮効率(1ラウンドで100万倍以上)を実現できることを実証した。また、実際にcDNAライブラリーからのスクリーニングを行った結果、多発性骨髄腫に対し殺細胞活性を示す低分子薬剤であるサリドマイド誘導体に結合する標的タンパク質の選択実験にも成功した。
(2)マイクロ流体チップの試作
 フォトリソグラフィ技術を用いて化学増感型ネガ型レジストやシリコン樹脂を加工してマイクロ流体チップを試作した。IVVスクリーニング効率の評価を行いながら、最適な流路形状、金薄膜の膜厚、成膜条件及び表面処理に関して検討した結果、最適な形状、膜厚及び表面処理を見出した。また、PDMSの流路とキャップの接合に関して、ガラス基板とPDMS構造体の接合の際に金薄膜表面状態にダメージを与えないような手法を模索して接合技術を最適化した。
(3)自作したマイクロ流体チップを利用したIVVスクリーニング効率の評価
 当初は、市販のBiacoreセンサーチップを利用し、その上にカルボキシメチルデキストランで被覆後、ストレプトアビジンを結合させ、ビオチン化リガンドを固定させていたが、上記(2)で述べた完全に自作した基板とフローセルを用いて濃縮実験を行った結果、市販のものとほぼ同程度の高い濃縮効率(100万倍)が得られた。
V.評価
独自に開発したIn vitro virus法を更に発展させるために、核酸試料の少量化のための反応槽の開発並びに核酸の翻訳によって発現したタンパク質の特異的検知のための高感度装置の開発を行い、その両者に成功した。このIVV法はこれまでに考案され実用化されているファージ・ディスプレイ法をさらに発展させており、今回の開発により、目的遺伝子を数万倍に濃縮できるようになった。その結果、有用なタンパク質とその遺伝子を広い範囲で特異的にスクリーニングすることができた。さまざまな生命科学領域での応用が可能なことから、開発成果の事業化へ向けた取り組みを引き続き行うことが期待される。
本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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