資料4

開発課題名「室温で動作する生体磁気信号計測用薄膜磁界センサの開発」

開発実施期間 平成19年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  薮上 信【東北学院大学 工学部 准教授】
中核機関 :  東北学院大学
参画機関 :  仙台高等専門学校
(財)電気磁気材料研究所
宮城県産業技術総合センター
T.開発の概要
 本開発では、室温で動作し10-13 Tesla 台前半の磁界検出分解能を有する薄膜磁界センサの開発と、心磁界等の生体磁気信号計測を目的とする。提案するセンサは液体ヘリウム等を必要とせず、SQUID(超伝導量子干渉素子)に匹敵する分解能を有するものであり、低コストで、一般病院へも普及可能な汎用システムとなり得る。本開発では試作したセンサにより健常者の心磁界等を計測し、医療応用上の課題を評価する。
U.事後評価における評価項目
(1)室温で動作し10−13 T台の検出分解能を有する薄膜磁界センサ(高周波キャリア型センサ)の開発
 アモルファスCoFeSiB薄膜およびコプレーナ型伝送線路を用いてセンサ素子全体を薄膜プロセスで構成し、素子サイズが5mm×3mmで、位相変化感度は最高で約150 degree/Oeを得た。さらに差動接続したセンサユニットと、パルスモータにより最小分解能10ミクロンで2次元駆動機構を組み合わせた走査型センサシステムを開発した。ドライズコイルによる交流磁界を与えて渦電流探傷法により計測する方法、および被測定物からの微弱磁界を計測する方法の両方ともに対応した2次元磁界分布を計測可能とした。いくつかのノイズ対策の結果、磁界検出分解能は1Hzの微弱交流磁界に対して9×10-13Tを得た。室温で動作する薄膜磁界センサとしてはサブpTの磁界検出分解能を達成したことははじめての成果である。
(2)磁性微粒子夜勤族内部の微小クラックの計測
 直径1mm〜5mmの貫通孔をもつアルミニウム試料について渦電流探傷法により評価し、貫通孔位置が正確に計測できることを示した。これは金属構造物等への非破壊検査を想定したものである。また磁性ナノ微粒子の濃度に応じた微弱漏れ磁界の変化が定量的に評価できることを示した。
(3)健常者の心磁界(PQRST波)の計測
 体表面に薄型磁界センサヘッドを近接配置し、健常者心磁界の計測を行い、QRS波、T波、P波の計測に成功した。同時計測した心電計による計測結果と比較して、ほぼ主要な波形が対応することを示した。また心臓近傍の多点計測によりほぼ合理的な心磁界波形が得られることを明らかにした。
V.評価
機器の高感度化については目標数値を達成したことについて評価できる。開発チームの十分な努力が認められるものの、目標として掲げられた生体磁気信号計測用薄膜磁界センサとして有効活用するためには磁気シールドルームを小型化する必要があるなどの制約があり、実用化までには解決すべき問題が多い。特に当初の利用目的として掲げた心磁計は装置サイズを考慮に入れると心電図と比較した際の有意性が低い。また生産現場に於ける製品チェック用として利用するには、将来の実用化に未解決の部分があり、特に小型化が必要と考えられる。今後、装置のコンパクト化等を含めた実用化に当たり、ユーザーの絞り込みとニーズを踏まえた応用開発を期待したい。
本開発は、当初の開発目標を達成したが、本事業の趣旨に相応しい成果は得られなかったと評価する[B]。


前のページに戻る