資料4

開発課題名「ハンディー型全反射蛍光X線元素センサー」

開発実施期間 平成19年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  河合 潤【京都大学 大学院工学研究科 教授】
中核機関 :  京都大学
参画機関 :  なし
T.開発の概要
 片手で持ち運びができる超小型全反射X線元素センサーを製作し、ICP−MSに匹敵する定量下限濃度を実現する(トレース・アナリシス)。しかもその濃度の分析に必要とされる水溶液の絶対量がわずかでもできるようにすることを目指す(マイクロアナリシス)。具体的には遷移金属元素についてサブ・ナノグラム(0.1ng)の絶対定量下限を達成する。そのために、X線光学系とX線発生法に関する開発も行う。
U.事後評価における評価項目
(1)ICP−MSに匹敵する定量下限濃度の実現
 前濃縮法を用いないで、装置をそのまま使用しただけでも、0.1ng (1ppb)を達成した。濃縮法は加熱して液滴を乾燥させるだけで十分であり、専用の乾燥器具も開発した。試料液量を10倍にすれば、0.1ppb含まれる元素を検出可能である。鉛やヒ素のような遷移金属以外の有害元素でも0.1ngの定量下限を達成した。遷移金属についてはCoが10pgの定量下限で最もよく、Scの30pgがもっとも悪い値であったが、目標の100pg(=0.1ng)を遙かに凌駕する値となった。
(2)濃度の分析に必要とされる水溶液の絶対量がわずかでも分析可能とする
 試料液量として、通常は1ppbの試料水溶液1マイクロリットルでも分析できるが、これはごく僅かの飛沫でも分析できることを意味する。
(3)片手で持ち運び可能な超小型全反射X線元素センサーの製作
 装置全体の重量は6,061gとなった。これはX線防御できる十分な厚さの鉄製の箱を取り付けたためであり、装置本体だけの重さは4,118gであった。5kg以下の装置重量でも十分X線防御は可能であり、目標を達成した。装置の大きさは31 cm (幅) ×25cm (高さ)×13cm (奥行き)である。
V.評価
片手で持ち運びが可能であり、全元素を対象としたICP−MSに匹敵するX線元素センサーの開発は順調に進捗し、提案されていた焦電結晶を用いることはできず、当初計画から一部の変更はあったものの、結果として高感度化に最適な組合せを得ることができ、開発成果の特許出願、協力企業によって製品化を達成した。本開発の成果は既に複数の海外のメーカーからもライセンスに関する問い合わせがあり、簡易X線分析機器として有用性を示しつつある点についても高く評価できる。
本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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