資料4

開発課題名「タンパク質および核酸の超高感度シグナル検出試薬」

開発実施期間 平成19年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  伊藤 悦朗【徳島文理大学 香川薬学部 教授】
中核機関 :  徳島文理大学
参画機関 :  北海道大学
北海道医療大学
(株)ビーエル
T.開発の概要
 タンパク質および核酸の高感度検出方法として、本チームにより「酵素サイクリング免疫測定法」が開発されてきた。酵素免疫法において汎用的に使用しているアルカリホスファターゼなどを抗体標識酵素として、それによって脱リン酸化された基質を酵素サイクリング法で増幅し、その結果、シグナル強度を大幅に増強させる「超高感度シグナル検出試薬」を開発する。
U.事後評価における評価項目
(1)チオNADサイクリング反応において、200回転/分のサイクリング率を達成する
 サイクリング法での脱水素酵素として3α-hydroxysteroid dehydrogenaseを用い、かつ基質として改変したandrosteroneを用いて、300回転/分以上のサイクリングを実現した。ここで、androsteroneの改変は17位を修飾した。また酵素反応の至適条件も見直し、バッファー組成のリン酸基濃度を増やした。
(2)標識酵素とチオNADサイクリング反応の組合せにおいて、10―20moles(酵素量)の検出を可能とする
 標識酵素としてアルカリホスファターゼまたはβガラクシダーゼのどちらを用いた場合でも、市販のプレートリーダーを用いた測定系で、10-20 moles/well以上の検出限界を達成でき、超高感度化測定に成功した。現時点では、両酵素の反応性に優劣は無いと思われる。なおこのデータを出すために上述したとおり基質の17位を修飾し、その合成法を確立した。
(3)チオNADサイクリング応用酵素免疫測定法において、純品タンパクを用いたモデル系で10―20molesの検出を可能とする
 ヒトTNF-αを純品モデルタンパク質とし、上述のアルカリホスファターゼを標識酵素として用いた場合、スケールダウンの効果を計算に取り入れるならば、10-20 moles/wellの感度が得られたことになり、目標を達成した。なお、チオNADサイクリング反応の理論値からすると、連続法(酵素免疫反応と酵素サイクリング反応をワンポットで行う)に移行できれば更なる高感度化が望める。
V.評価
ELISA法にチオNADサイクリング法という信号分子増幅反応を組み合わせて、従来のELISA法より1000倍以上高感度のタンパク質検出法を開発した。この方法を用いて、数種類のモデルタンパク質純品と、応用としての結核菌群を測定し、これを実証した。中間評価で指摘されたブランクについては、その原因となる酵素反応の相互干渉を回避する方法が課題であったが、受け渡される基質の分子構造を最適設計・新規合成することによって解決した。今後は夾雑物の影響、より高感度なワンポット反応への移行などについてさらに検討し、開発成果のキット化等実用化を期待したい。
本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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