資料4

開発課題名「収束イオンビーム/レーザーイオン化法による単一微粒子の履歴解析装置」

(機器開発プログラム:領域特定型「極微少量環境物質の直接・多元素・多成分同時計測」)

開発実施期間 平成16年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  藤井 正明【東京工業大学 資源化学研究所 教授】
中核機関 :  東京工業大学
参画機関 :  新日本製鐵(株)
分子科学研究所
工学院大学
T.開発の概要
 ナノスケール加工可能な収束イオンビームと特定の分子種を選択検出できるレーザーイオン化を融合した新たな局所分析法により、微粒子の表面と内部の組成の違いを計測する単一微粒子履歴解析装置を開発する。有害な大気浮遊粒子状物質のうち、環境場や発生起源に特徴的な微粒子に適用し、年輪のように刻まれている組成分布情報から発生源や浮遊履歴を解明する。これにより汚染物質の生成機構を明確化することで環境科学に貢献する。
U.事後評価における評価項目
(1)単一微粒子の履歴分析装置の開発
 10μm以下の浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter:SPM)を顕微鏡分析でき、粒子表面と内部の化学組成の差異を明確化できる分析装置を開発した。人体影響の懸念から規制が始まった2.5μm以下の微粒子を分析可能な40nmの面分解能(世界最高値)を達成した。また、都市大気中から捕集したSPMの表面・内部イメージングに成功した。加えて、同一微粒子に対して有機物と無機物の同時分析も可能な装置となった。
(2)固定設置型分析装置
 サンプリングした試料を持ち込み分析するために固定設置型分析装置として仕様を確定し、プロトタイプ機として開発した。小型マイクロチップレーザーの開発・導入によって、装置サイズを幅1.5m×奥行1.5m×高さ2m、重量1,000kgに小型化し、SEM機能を併用することで、FIB照射ダメージを抑えた最新の手法として完成した。
(3)その他の成果
 完成したプロトタイプ機は、当初の想定を越えて、多環芳香族やポリマー等の有機材料のレーザーイオン化スペクトル測定と質量イメージングに成功した。また、疑似位相整合(QPM)素子の変換効率が70%となり、世界記録を達成した。
V.評価
本課題によって開発した装置は、当初の目的通り、大気中のSPM粒子をSEM観察するとともにイオンビームを用いて加工し、その断面をレーザーを用いて効率的にイオン化し、質量分析することによってその内部組成をイメージングすることを可能とした。この装置は面分解能40nm等の世界最高値を出したのみに留まらず、レーザーの小型化に伴って装置のダウンサイジングも実現した。さらに本装置は、当初の予想を超えて有機物の測定・イメージングを可能としたことから、環境分析分野に留まらず、広く先端産業分野における材料解析装置として応用できる可能性を示しており、高く評価できる。今後は、装置の実用化に向けて、有機物の測定データを充実し、使いやすい装置として手作業の軽減、ソフトウェアのユーザビリティ向上に努めるなど、早期に成果の普及がなされることを強く期待したい。
本開発は当初の開発目標を達成し、それを上回る特筆すべき成果が得られたと評価する[S]。


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