チームリーダー : | 江藤 剛治【近畿大学 理工学部 教授】 |
中核機関 : | 近畿大学 |
参画機関 : | オリンパス(株) (独)理化学研究所 (財)NHKエンジニアリングサービス |
- T.開発の概要
- 蛋白質の細胞内での急激な構造変化やイオンチャンネルのイオン放出時の瞬間的開閉機構のような細胞内のマイクロ秒スケール現象が観察できるようになれば、細胞を生かしたまま様々な現象を解明することができる。そこで1千万枚/秒で撮影できる超高速度と、光子を感知できるレベルの超高感度を併せ持つCCD型撮像素子を備える超高速ビデオ生物顕微鏡システムを開発する。
- U.事後評価における評価項目
- (1)1〜1千万枚/秒の高コントラスト超高速ビデオ生物顕微鏡の開発
- 低光損失染色細胞観察顕微鏡により、従来の顕微鏡の1/100程度の光量で微分干渉、暗視野撮影等の無染色細胞の観察ができ、100万枚/秒での高コントラスト微分干渉撮影ができた。また超高速蛍光顕微鏡により、25万コマ/秒で生きたままの精子の明瞭な蛍光観察ができた。
- (2)撮影部の高感度化
- 目標であった最高撮影速度100〜1000万枚/秒に対し、1600万枚/秒を達成することができた。目標感度1〜10フォトン/画素に対し、CCM(多段衝突イオン化増倍)を使わない場合、30フォトン/画素となった。内蔵CCMでは10フォトン/画素以下を達成した。しかしCCM駆動電圧の微動による増幅率の安定性については改善を要する。したがって評価カメラは未達となったが、中核技術である高速裏面照射撮像素子は開発することができた。
- (3)超高速ビデオ蛍光撮影技術の開発
- 神経細胞や小脳の切片試料を使い、生きたまま微細電極で刺激を与え、62,500枚/秒までの速度で蛍光ビデオ撮影を実施できた。神経細胞の1種であるDRG 細胞内のカルシウムイオンの移動速度について、従来発表されていた速度より100倍程度速い計測例が得られた。
- V.評価
- 本開発の目標の1つである最高撮影速度1,600万枚/秒を達成することができたが、感度10フォトン/秒については未達となった。本開発により、神経細胞など生体試料について生きたままの高速ビデオ蛍光撮影が可能となった。生理学等の分野で従来の細胞内の静止画配列では観察できない現象が、このプロトタイプ機を用いることで、様々な細胞に関してマイクロ秒スケールでの挙動が観察できるものと期待される。
- 本開発は、当初の開発目標である最高撮影速度を達成したが、高感度撮影および実試料の観察における超高速撮影が未達であり、現時点では本事業の趣旨に相応しい成果は得られなかったと評価する[B]。