資料4

開発課題名「単一細胞内遺伝子発現プロフィール解析システム」

開発実施期間 平成17年10月〜平成22年3月

チームリーダー :  安倍 真澄【(独)放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター グループリーダー】
中核機関 :  (独)放射線医学総合研究所
参画機関 :  (株)アステック
オリエンタル酵母工業(株)
北海道大学
T.開発の概要
 HiCEP法は、マイクロアレー法とは原理の異なる遺伝子発現プロフィール技術であり、未知転写物や低発現転写物の網羅的・定量的観察を可能とし、また解析に先立ちシーケンス情報を必要としないため全真核生物の解析を可能とする。本開発では、HiCEP法を基にした単一細胞内における遺伝子発現プロフィール解析システムの構築を行う。これにより、疾患原因遺伝子の検索、モニタリングが必要な全ての分野の状況を一変させることが期待される。
[注]HiCEP:High coverage gene expression profiling
U.事後評価における評価項目
(1)微量HiCEP技術の開発及びHiCEP反応のキット化
 合成アダプターのリン酸化、逆転写酵素そのもの、またその反応諸条件など、HiCEP反応の各ステップを改良した結果、目標である1-20細胞からの解析が可能となった。特に、単一細胞解析では、少なくとも発現量の高い約5,000以上の転写物の解析を実現した。また、顕微鏡のスライドガラスと同等の大きさで、厚さ3-5 mm程度の反応用チャンバーを作製し、これと試薬とを一体化したRNA 1μgおよび0.1μg用キットを完成させた。現在、このキットの市販化に関する検討を進めている。
(2)ハイスループット自動反応装置(微量HiCEPer)及び高精度PCR装置の開発
 分注など微量液体ハンドリング装置、高精度温度制御装置(インキュベーション)及び磁気ビーズ法による核酸精製装置を主なモジュールとする自動反応装置を完成させ、一度に96反応が可能となった。この装置は、小型 [120(W) x 70(D) x 165.5(H) cm]量産型であり、市販機としての普及が期待できる。また、ウェル間の温度差を±0.15℃以下に抑えた高精度PCR装置の開発にも成功し、既に販売を開始した。
(3)ガラス(石英)チップ電気泳動型分取装置の開発
 HiCEP法において、変化のあったピークの塩基配列を得るためには、目的のピークの単離(1塩基の分離および分取)という作業が必須である。マイクロメートルオーダーの電気泳動用及び分取用流路を有するガラスチップを作製し、レーザー励起/CCD検出によるDNA検出と分取が連動したシステムを構築することに成功した。
V.評価
細胞が発現しているRNA(トランスクリプト)を総体として解析することを目標としてきたが、目標である1-20細胞からの解析が実現可能となった。特に、発現量の多いRNAに関しては、単一細胞での解析が可能になり、iPS細胞の同定ができるようになったことは画期的である。また、困難な開発課題であるミクロ分取装置の開発にも挑戦している。加えて、機器開発だけでなく、データ解析ソフトウェア開発やデータベースを公開したことも高く評価できる。今後、事業化を進めるにあたり、より実用的な分取装置の開発に努めるとともに優れたアプリケーションを多く見出し、市場開拓の取り組みを期待したい。
本開発は当初の開発目標を達成し、本事業の趣旨に相応しい成果が得られたと評価する[A]。


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